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1章 妖精のお姫様
第1話 【十六夜(いざよい)】
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「ふぅー」
思惟は、仲居の和服のままベットに倒れこみ、
対象年齢3歳以上の熊の抱き枕を抱きしめた。
兄の部屋から勝手に借りてきたブルガリのメンズ様香水をつけた熊に顔をうずめると、
ホッとした瞼が自分の意思とか関係なく閉じた。
今日は珍しく団体客の宴会が会った。
現世(うつしよ)封鎖事件後、客足が遠のき、暇を持て余した体がなまっていた分、
久しぶりのハードワークは疲れた。
意思が、深い深層に沈み掛けた時、クローゼットから
「カシャン」と金属がすれる音が聞こえた。
誰かいる?
思惟は、深層に落ちていく意思を無理やり引上げた。
「もしかすると・・・・仲居さんたちが話していた、
この旅館に恨みを持ったまま死んだ長い黒髪の女の幽霊?」
そんな事が意識に浮かぶ。
やたら目つきの怖く恐ろしい女の幽霊が出る・・・らしい。
江戸時代から続く、老舗の温泉旅館だけに、その種の話は耐えない。
思惟の部屋は、祖母が住んでいた部屋で、
簡単にリフォームをしたが古めかしい雰囲気を、
消し去ることは出来ずにいた。
祖母と決して仲が良くはなかった今の女将の継母に進められて、
無理やり住まわされた部屋だ。
仲居さんの間では、特に出ると噂の部屋だ。
生前、祖母がその黒髪の女の幽霊を宥めているのを、
仲居さんが聞いたとか聞かないとか・・・
「おばあちゃんの49日が、過ぎたばかりだし・・・」
蛍光灯の明かりは煌々と部屋を照らしていた。
祖母の着物が掛けてあるクローゼットルームの奥に、何かの気配を感じた。
「来る!」
思惟は、ベットの下に忍ばせていた薙刀の竹刀をつかんだ。
気配は、思惟の予想よりも早く接近してきた。
170cmほどの武者・・・?
「ん?・・・・落ち武者?・・・・そんなアホな」
自分の判断に自分で疑問符を付け自分でツッコんでみた。
ツッコミにも関わらず、黄金の甲冑を身に着けた落ち武者がこちらに向かってくる。
「あれ?ロビーに飾ってあった黄金の甲冑?」
物心ついた時から見ていた黄金の甲冑を纏った武者は刀を抜いた。
「えっ敵対?旅館の守護神じゃなかったの?!」
迫ってくる武者の勢いは、冗談の域を超えていた。
「躊躇は出来ない!」
恐怖に駆られた思惟はその気配めがけて、薙刀で突いた
「真剣?」
そう思った思惟の視界に、
殺気を帯びた真剣が蛍光灯の明かりに照らされて、
キラリと光り薙刀の竹刀を叩き切った。
「え!?」
次の瞬間、思惟の首元に刀の刃が突きつけられ、助けを呼ぶ隙も無かった。
黄金の甲冑と兜を纏った武者が思惟を押さえつけた。
思惟はロビーに飾られている黄金の甲冑と兜を思い出した。
幼心に自分を守ってくれる武者だと夢想していた。
しかし、目の前のその武者は明らかに敵対していた。
首元の刃から冷たい殺気伝わってきた。
幸が薄い顔とは言われてたけど、
「こんなことになるなんてホントに幸が薄かったんだ」
と思うと涙が出た。そして、なんか辛くなった思惟は、自分の人生に
「なんでやねん!」
とツッコンでみた。声に出すつもりはなかったがつい声に出てしまった。
兄にツッコミとして育てられた悲しい性だ。
しかし、そのツッコミのあまりの間の悪さに武者は首を傾げた。
首の傾げ方は、やたら可愛かったが、一か八か・・・
その動作のわずかに隙を突いて、武者の胴を思いっきり蹴飛ばした。
遠慮の無い兄とガチで、竹刀で打ち合って来たお蔭で、格闘戦の感覚は身についていた。
蹴とばされた武者はまるで人形のようにコテッと、倒れてしまった。
「よ・・・弱!」
思惟はそう思うと、怖がっていいのか笑っていいのか解らない状況のまま、
武者の刀を持つ手を掴み、武者を押さえつけた。
武者はその武骨な姿にも関わらず、アワアワと手足をバタつかせた。
「なんか可愛い♪」
とニンマリとしてると、背後に殺気を感じた。
「しまった・・・・この武者は囮?」
対応するまもなく背後から首元に白刃が突き付けられていた。
「王女様を離して」
背後で少女の声がした。
「王女様?」
目の前でアタフタしてる落ち武者ぽいのが王女様らしいらしい。
つづく
思惟は、仲居の和服のままベットに倒れこみ、
対象年齢3歳以上の熊の抱き枕を抱きしめた。
兄の部屋から勝手に借りてきたブルガリのメンズ様香水をつけた熊に顔をうずめると、
ホッとした瞼が自分の意思とか関係なく閉じた。
今日は珍しく団体客の宴会が会った。
現世(うつしよ)封鎖事件後、客足が遠のき、暇を持て余した体がなまっていた分、
久しぶりのハードワークは疲れた。
意思が、深い深層に沈み掛けた時、クローゼットから
「カシャン」と金属がすれる音が聞こえた。
誰かいる?
思惟は、深層に落ちていく意思を無理やり引上げた。
「もしかすると・・・・仲居さんたちが話していた、
この旅館に恨みを持ったまま死んだ長い黒髪の女の幽霊?」
そんな事が意識に浮かぶ。
やたら目つきの怖く恐ろしい女の幽霊が出る・・・らしい。
江戸時代から続く、老舗の温泉旅館だけに、その種の話は耐えない。
思惟の部屋は、祖母が住んでいた部屋で、
簡単にリフォームをしたが古めかしい雰囲気を、
消し去ることは出来ずにいた。
祖母と決して仲が良くはなかった今の女将の継母に進められて、
無理やり住まわされた部屋だ。
仲居さんの間では、特に出ると噂の部屋だ。
生前、祖母がその黒髪の女の幽霊を宥めているのを、
仲居さんが聞いたとか聞かないとか・・・
「おばあちゃんの49日が、過ぎたばかりだし・・・」
蛍光灯の明かりは煌々と部屋を照らしていた。
祖母の着物が掛けてあるクローゼットルームの奥に、何かの気配を感じた。
「来る!」
思惟は、ベットの下に忍ばせていた薙刀の竹刀をつかんだ。
気配は、思惟の予想よりも早く接近してきた。
170cmほどの武者・・・?
「ん?・・・・落ち武者?・・・・そんなアホな」
自分の判断に自分で疑問符を付け自分でツッコんでみた。
ツッコミにも関わらず、黄金の甲冑を身に着けた落ち武者がこちらに向かってくる。
「あれ?ロビーに飾ってあった黄金の甲冑?」
物心ついた時から見ていた黄金の甲冑を纏った武者は刀を抜いた。
「えっ敵対?旅館の守護神じゃなかったの?!」
迫ってくる武者の勢いは、冗談の域を超えていた。
「躊躇は出来ない!」
恐怖に駆られた思惟はその気配めがけて、薙刀で突いた
「真剣?」
そう思った思惟の視界に、
殺気を帯びた真剣が蛍光灯の明かりに照らされて、
キラリと光り薙刀の竹刀を叩き切った。
「え!?」
次の瞬間、思惟の首元に刀の刃が突きつけられ、助けを呼ぶ隙も無かった。
黄金の甲冑と兜を纏った武者が思惟を押さえつけた。
思惟はロビーに飾られている黄金の甲冑と兜を思い出した。
幼心に自分を守ってくれる武者だと夢想していた。
しかし、目の前のその武者は明らかに敵対していた。
首元の刃から冷たい殺気伝わってきた。
幸が薄い顔とは言われてたけど、
「こんなことになるなんてホントに幸が薄かったんだ」
と思うと涙が出た。そして、なんか辛くなった思惟は、自分の人生に
「なんでやねん!」
とツッコンでみた。声に出すつもりはなかったがつい声に出てしまった。
兄にツッコミとして育てられた悲しい性だ。
しかし、そのツッコミのあまりの間の悪さに武者は首を傾げた。
首の傾げ方は、やたら可愛かったが、一か八か・・・
その動作のわずかに隙を突いて、武者の胴を思いっきり蹴飛ばした。
遠慮の無い兄とガチで、竹刀で打ち合って来たお蔭で、格闘戦の感覚は身についていた。
蹴とばされた武者はまるで人形のようにコテッと、倒れてしまった。
「よ・・・弱!」
思惟はそう思うと、怖がっていいのか笑っていいのか解らない状況のまま、
武者の刀を持つ手を掴み、武者を押さえつけた。
武者はその武骨な姿にも関わらず、アワアワと手足をバタつかせた。
「なんか可愛い♪」
とニンマリとしてると、背後に殺気を感じた。
「しまった・・・・この武者は囮?」
対応するまもなく背後から首元に白刃が突き付けられていた。
「王女様を離して」
背後で少女の声がした。
「王女様?」
目の前でアタフタしてる落ち武者ぽいのが王女様らしいらしい。
つづく
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