思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)

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5章 美少女な式神

6話 式神起動スイッチ

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翡翠の式神と、その胸ポケットに入っているはなもりは、
冒険モードでウキウキしていた。

思惟は、そんな2人の雰囲気に、

「あのお楽しみのところ、申し訳ないんですが・・・・」

「どうしましたかっか?」

「行くのは良いのですが、この式神、動かないんです」

コックピット内で思惟は言った。

翡翠の式神の碧依が、美少女な式神を見た。
仮面の奥の目は、完全に恋する少年の目だ。

思惟には関係のない事だけれども、美少女な式神を操縦する者として、見逃せない目だ。

碧依が、にやりと微笑んだかどうかは、解らない。
でもそんな雰囲気だ。

「えーマジですか?あれじゃないですか?」

はなもりは、ポケットの中から翡翠の仮面を見上げた。

「あれって?」

「スイッチっすよ」

「式神にスイッチなんてあるんですか~」

「うちのボスの貴人型は、ボスが乗った後、会璃(あいり)が、いつもスイッチを押してるぜ」


思惟は、スイッチらしいのを探したが、スイッチらしきものは沢山あり過ぎて、どれを押して良いのか・・・

「どれを押せばいいのか、解らないんですが・・・」

「閣下、コックピット内じゃなくてさ、外側にあるんだぜ。俺も正確な位置は解らないけど、会璃は貴人型のお尻らへんを、押してたな」

「碧依さま、嫌らしい!美少女な式神を触りたいだけでしょう!
動けない貴人型に、嫌らしい事したら、姫様に言いつけるからね!」

「ホントだって!ボスに聞いてみれば・・・」

「姫様の睡眠は邪魔しないの!」

「じゃあ会璃に・・・」

碧依は、心の奥で会璃と繋がった。

思惟とはなもりは、翡翠の仮面を見つめた。
深い青色の翡翠の仮面は、神秘的で美しかった。

「解った・・・尾てい骨の先にあるらしい」

翡翠の仮面の奥にあるであろう目が、思惟の乗る貴人型式神を見つめた。

「尾てい骨の先ですか?ほぼお尻じゃないですか」

思惟の身体ではないけど、めっちゃ恥ずかしい。

「閣下、押してみますか?」

碧依は言った。

でも、スイッチが入らない事には、動けないし・・・

思惟は、美少女な式神の意思を確認しようと、心を静かにして、美少女な式神の意思を探った。

「スイッチ入れても良い?」

思惟は、コックピットを覆う白磁の様な壁を、じっと見つめた。

それは気のせいかも知れないが、恥じらいを感じた。
その恥じらいは、思惟の心にある恥じらいと同じ種類の恥じらいだった。

でも・・・・

それは、音としての言葉ではなかったし、思惟が勝手にイメージしたものだったのかも知れない。
だとしてもそれは、「でも」に近い意味だと感じた。

「でも?」

思惟が聞き返しても、返答はなかった。
思惟は操縦桿を握った。そして

「押してください」

「了解しました!閣下の命令は絶対!それでは押します」

「ええええ碧依さま、かなりいやらしい・・・」


碧依は、思惟の乗る美少女な式神の背後に回った。

「なんかドキドキします。変な意味で・・・」

「かっか!安心してください!はなもりが厳重に監視してますから!」

「ありがと」

思惟はコックピット内で式神スイッチが入るのを、じっと待った。

コックピット内でも、美少女な式神の背後の碧依の気配を感じた。

「これかな?」

碧依の声がして、思惟の身体に、目に見えないミストの様な物が降り注いだ。
ミストは魂だけの思惟に染み込んだ。そして、目に見えないミストを通じて、思惟は美少女な式神と繋がった。

心地の良い一体感に、思惟の魂は躍った。

「かっか~動けます?」
「うん、大丈夫のような気がします」

思惟は、目を閉じて、操縦桿を握った。
貴人型式神が見ているであろう視覚が、
まるで自分の物の様に見えた。

「武器庫に行く」

思惟が意識を送ると、美少女な式神は、最初の足は一歩を踏み込んだ。

「おおおお!」

はなもりと碧依の歓声が聞こえた。

初めての共同作業によって、美少女な式神の意思が、思惟の意識に流れ込み、思惟の意思も美少女な式神の意識に流れ込んでいった。

美少女な式神の意思の清らかさに思惟は涙が出そうになった。


つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます\(^▽^)/
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