思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)

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3章 12人の思惟

4話 窓の外には、赤い火星が見えた。

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女将の間にある、榧(かや)風呂の、

古さは、長い時間の流れを感じさせた。


榧風呂の湯船は、

1人が入るにはちょっと広めで、

ゆったりとしていた。


チーム・西の島の4人の思惟は、

何となくの流れで、一緒にお風呂に入ることになった。



「この世で一番可愛いのだ誰だ?」

 

「それは思惟ちゃんだよ♪」

 

「えーマジですか~」



鏡に映る自分が味方なら、

自分に対してどう接してくれるだろうか?



「思惟ちゃん可愛い」


「思惟ちゃんも可愛いよ」


「えーーーマジですか~」


「うんおっぱいは小さいけど、綺麗な形してるし」


「思惟ちゃんのおっぱいも綺麗だよ」



心の底に潜む不安を、紛らわすための自画自賛だけど、

それを言い合える存在は、味方なのか?


少なくとも、12人に分かれた思惟たちは、

味方な気がする。

そして、私は決して裏切る事のない味方でいたい。


ふと窓の外を見ると、赤い火星が見えた。



「私はもうちょっと入ってる」


「あんまり長く入っていると、のぼせるよ」


そう言うと、チーム西の島の3人の思惟は、

内湯を出て行った。

 同じ過去。同じ記憶。同じ声。同じ顔。同じ身体。 

チーム西の島の思惟の4人目・思惟Ωは、

3人の思惟の同じ形をしたお尻を、見送った。



チーム・西の島の思惟たちは、

まるで無二の親友同士の様に楽しげにしていた。


他人ではない自分。

何を考えているのか解らない他人とは違い、

思惟たちと一緒にいる時間は、

ホントに落ち着いて癒された。


思惟Ωは、乳白色のお湯を顔に掛けると、

溜息をついた。


そして、落ち着いて癒されてばかりは、

いられない現実の事を考えた。



思惟Ω、彼女は覚えていた。

あの妖精の住む地下で、

何があって、何をされたかを・・・



妖精たちは、式神を作ろうとしていた。

あの妖精の姫さまに仕えていた式神たちの様な式神を。

兵器としての式神だ。神将級の式神は、

簡単に弾道ミサイルを叩き落とせる能力を持っていた。


姫さまのあの神将級式神は、60%が姫さまで魂の分霊で、

あとの40%はあやかしだ。


だからこそ、声も顔も身体も違っていた。


それが、思惟の場合は、思惟の分霊率が、

限りなく100%に近い式神が出来てしまった。


それは、妖精たちの技術では、

理論上ありえないらしい。


式神使いとしての能力が強すぎた結果らしい・・・


それが、地下の妖精たちにとって、

どういう意味を持つのかは解らない。



11人の思惟が、

どれだけ式神の要素があるのかは解らない。


間違いなく11人の思惟は、100%の人間ではない。

99、9999999999999999999999999・・・・%と、

100%の違いが、どう出るのかは不明だ。


思惟Ωは、自分がオリジナルではない事を知っていた。


あの時の事は、【生まれた】と言う表現より、

【存在が始まった】と言った方が、

正しいかもしれない。


思惟Ωは、

物質として自分の存在が始まった瞬間を、

覚えている。


気体から液体に代わり、そして物質化し、

思惟Ωの存在は始まった。


少しづつ形成していく自意識と自分。

それはとても心地良い感触だった。


自分と言う物質が、

この世界に存在している充実感。


乳白色のお湯の中で、

思惟Ωは、拳を強く握り、

この物質世界の自分を強く意識した。



つづく

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