思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)

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2章 分身の術?

13話 私、12人に増えちゃいましたーイエーイ♪

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「私、12人に増えちゃいましたーイエーイ♪」と、

言った場合の世間の反応を思惟βは、

ベットで毛布に包まったまま、想像していた。

「なんでやねん!」と笑いながらツッコむ人がいたら、

そいつはかなりの大物だ。

この旅館は異世界じゃないし、勇者も魔法使いもいない。

至って平凡な温泉旅館。

 

そんな事を想像している内に、 

思惟αが、物置部屋から出て来た。

愛おしい・・・なぜあの思惟だけを、愛おしく思えるのか?

 

この愛おしさで

「私、12人に増えちゃいましたーイエーイ♪」と、

言ったら、世間は温かく迎えてくれるのではないか?

そんな事はないか(苦笑)


「南の島の子たちが居なくなったみたい・・・」


「うん、聞こえてた」

思惟βは、毛布に包まったまま答えた。そして、


「思惟(α)ちゃん、あのね・・・」


「何、思惟(β)ちゃん」


「今、私たちが求める事って何だと思う?」


「ん?」


「私たちは、元の生活に戻る事を目指している。

要するに、1人の思惟に戻る事。

分身の術なのかクローン技術なのか、

式神の様な技術なのかは解らない。

どれにしたって、12人の状態で、

ここでずっと生活することは無理」


思惟βは、思惟αを引き寄せ、

毛布に包みこむと、耳元で囁いた。


「・・・誰かが居なくなったて事は、ある意味良い事。」


「!」


αが怒りの声を出す前に、βはαの口を塞いだ。そして、


「12人でここにいる事は無理、でも2人ぐらいなら可能でしょう。

旧館にはほとんど誰も来ないし・・

私はあなたの事好き・・・だから・・・一緒に。」


αは口を塞がれながらも、言った。


「そんな裏切りは嫌!」


「西の娘や、南の娘の事は良く解らないけど、

12人の中であなたが一番出来が悪い。

そんな15歳のあなたが、身分を偽って、

誰も知らない街で生きていけると思う?

少なくとも、あみちゃんと璃琥くんなら、逞しく生きていける」


「みんなを追い出すって事!?」


思惟αの、予想以上の怒りに満ちた目に思惟βは焦った。



あみちゃんと璃琥が、

物置部屋から出てくる気配を感じたので、

思惟αの口びるに人差し指を立てて、口止めした。


 思惟αの目は、涙で潤んでいた。


もう一人の自分が泣きそうになっている。


鏡の中のもう一人の自分が、

泣きそうになっているみたい・・・


悲しみと怒りがごちゃまぜになった感情が、

思惟βの心に渦巻いた。


泣いたからと言って状況は変わらないのだが、

思惟βは、可能性の1つとして、12人の思惟が、

存在し続けるられる案を考えてみることにした。




つづく
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