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4章 結社同盟
1話 「恋心」と「ありがとん♪」
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ちょっと時間を戻して・・・
ベルガールに、ハグされると由良穂香の気力が満ちていった。
ハグするだけで、気力を満たしてくれる人って素敵♪
何の香水だろう?良い香りがする・・・
1階に近づきエレベータのドアが開きそうになった。
由良穂香は、ベルガールから離れた。
「もう大丈夫?」
「うん、ありがと」
由良穂香の満足した表情を見たベルガールは、言った。
「憲兵隊が草刈りを始めるみたいよ」
「うん」
「憲兵隊が誘拐犯を炙り出すかも知れないね」
「うん、そうだと良いね」
憲兵隊に炙り出される可能性は、由良穂香の秘密結社とその同盟結社にもある。
すでに幾つかの手は打ってあるが・・・完璧を期さなければならない。
エレベーターのドアが開くと、ベルガールは普通のベルガールに戻り、
「ありがとうございました」
と営業スマイルで由良穂香を見送った。
さて、家臣くんの取り調べは、ラマンさんに任せるとして、年中発情期のラマンさんでも、まさか私の家臣を襲わないとは思うけど、少し心配。
ホテルのロビーを抜け、ドアに近づくと、人のよさそうなドアマンが、ドアを開けてくれた。
彼が、屈強なグルカ兵出身だと知ってる人間は、秘密結社関係者に限られている。
故に、ホテルとしては異常な警備態勢だと気付く人間は、まずいない。
ドアマンと軽くハイタッチをして、ホテルの外に出た。
外に出ると、ちょっとだけ緊張する。
まさか、こんな人の多い場所で、私を浚うなんて事はしない筈だが・・・
「あのーこの辺りに美味しいうどん屋さん知りませんか?」
声を掛けてきたのは、年齢が18、9で、黒のGジャンに黒のジーパン、白いシャツ着た女子だ。
お腹の白い肌がチラチラと見えていた。
どーみても、観光客には見えない。
とりあえず、指令センターから指示のあった合言葉を言ってみた。
「パスタがお好きなんですか?」
「えーと、かき揚げと温卵と恋心でお願いします。」
「私は粉チーズを多めに入れたいですね」
「うどんにですか?!」
「ミートソースが一番良いです」
「うどんにミートソースを!?」
「シェフはイタリアで修行していたらしです」
「イタリアでうどんの修行ですか!?」
「お車ですか?」
「あっ、はい、あちらに停めてます」
「それでは、レストランまで案内しましょう」
「ありがとん♪」
会話がかみ合ってないのは、彼女が暗号を覚えて来てないせいだろう。
覚えていたのは「恋心」と「ありがとん♪」だけだった。
でも多分、彼女が指令センターから指示があった、護衛だろう。
コードネームは【ガラパゴスの美女】
秘密結社【ガラパゴス公国の逆襲】の結社員だろう。
コードネームが美女って、まあ、どちらかと言うと美少女と言ったところだが、
「ロタさん?」
彼女の声は控えめで清楚な、好感を持てる声質だ。
そして【ロタ】とは、由良穂香のコードネームの一つだ。
「ガラパゴスの美女さん?」
「はい」
「護衛の方ですよね?」
「はい」
どちらかと言うと可愛らしく華奢なガラパゴスの美女さんに、屈強さの欠片もなかった。
・・・なぜ指令センターは、私の護衛にこの人を寄こしたのか?
憲兵隊の草刈りも始まるし、色々混乱しているのは解るけど・・・
「あのー、 ロタちゃんのおっぱい触っても良いですか?」
初対面でいきなりこんな事を言ってくるド変態感。
控えめで清楚な声質が、ド変態感を陰な方向へ増幅させた。
そう、この陰な感じは、間違いなく秘密結社関係者だ。
そんな事だからうちの結社同盟は、百合同盟とか揶揄されるのだ。
「ダメです」
「え~、あくまで形式的な質問ですよ。綺麗なおっぱいの人にはみんなに聞いてるんですよ」
さらにド変態じゃないか!
ものすごく残念がる、ガラパゴスの美女さんの背後に、目を惹く車が停まっていた。
「もしかしてあれに?」
丸っこくて小さな車だ。
「私のお姫様、それじゃあ乗ってください♪」
お姫様・・由良穂香が姫巫女候補生と言う事は、秘密なはずだが、指令センターが護衛を頼む者と言えば、姫巫女候補生が多いのは事実だ。
姫巫女候補生が狙われるのは、最近始まった事ではない。
【由良穂香誘拐未遂事件】は、情報通の組織なら知っている情報なのだろう。
ガラパゴスの美女さんは車のドアを開け、エスコートした。
ドアが後ろ側に開くスーサイドドアには、ちょっと特別感があったが、どう見ても護衛用とは思えない。
・・・かなり目立つし
まるで今から遊園地の乗り物に乗る子どもの様に、運転席に乗ったガラパゴスの美女さんは、ニコっと微笑むと言った。
「私の愛車のスバル360です」
「シートベルトがないんですが?」
「つけなくても、昔の車だから大丈夫なんです」
狭い車内に、香しいガラパゴスの美女さんの香りが満ちていた。
独特な香りがした。今までで出会った事がない香りだ。
慣れれば悪くはない香りかも知れない。
スバル360は、不安を感じる古めかしいエンジン音を響かせながら、ホテルを後にした。
つづく
ベルガールに、ハグされると由良穂香の気力が満ちていった。
ハグするだけで、気力を満たしてくれる人って素敵♪
何の香水だろう?良い香りがする・・・
1階に近づきエレベータのドアが開きそうになった。
由良穂香は、ベルガールから離れた。
「もう大丈夫?」
「うん、ありがと」
由良穂香の満足した表情を見たベルガールは、言った。
「憲兵隊が草刈りを始めるみたいよ」
「うん」
「憲兵隊が誘拐犯を炙り出すかも知れないね」
「うん、そうだと良いね」
憲兵隊に炙り出される可能性は、由良穂香の秘密結社とその同盟結社にもある。
すでに幾つかの手は打ってあるが・・・完璧を期さなければならない。
エレベーターのドアが開くと、ベルガールは普通のベルガールに戻り、
「ありがとうございました」
と営業スマイルで由良穂香を見送った。
さて、家臣くんの取り調べは、ラマンさんに任せるとして、年中発情期のラマンさんでも、まさか私の家臣を襲わないとは思うけど、少し心配。
ホテルのロビーを抜け、ドアに近づくと、人のよさそうなドアマンが、ドアを開けてくれた。
彼が、屈強なグルカ兵出身だと知ってる人間は、秘密結社関係者に限られている。
故に、ホテルとしては異常な警備態勢だと気付く人間は、まずいない。
ドアマンと軽くハイタッチをして、ホテルの外に出た。
外に出ると、ちょっとだけ緊張する。
まさか、こんな人の多い場所で、私を浚うなんて事はしない筈だが・・・
「あのーこの辺りに美味しいうどん屋さん知りませんか?」
声を掛けてきたのは、年齢が18、9で、黒のGジャンに黒のジーパン、白いシャツ着た女子だ。
お腹の白い肌がチラチラと見えていた。
どーみても、観光客には見えない。
とりあえず、指令センターから指示のあった合言葉を言ってみた。
「パスタがお好きなんですか?」
「えーと、かき揚げと温卵と恋心でお願いします。」
「私は粉チーズを多めに入れたいですね」
「うどんにですか?!」
「ミートソースが一番良いです」
「うどんにミートソースを!?」
「シェフはイタリアで修行していたらしです」
「イタリアでうどんの修行ですか!?」
「お車ですか?」
「あっ、はい、あちらに停めてます」
「それでは、レストランまで案内しましょう」
「ありがとん♪」
会話がかみ合ってないのは、彼女が暗号を覚えて来てないせいだろう。
覚えていたのは「恋心」と「ありがとん♪」だけだった。
でも多分、彼女が指令センターから指示があった、護衛だろう。
コードネームは【ガラパゴスの美女】
秘密結社【ガラパゴス公国の逆襲】の結社員だろう。
コードネームが美女って、まあ、どちらかと言うと美少女と言ったところだが、
「ロタさん?」
彼女の声は控えめで清楚な、好感を持てる声質だ。
そして【ロタ】とは、由良穂香のコードネームの一つだ。
「ガラパゴスの美女さん?」
「はい」
「護衛の方ですよね?」
「はい」
どちらかと言うと可愛らしく華奢なガラパゴスの美女さんに、屈強さの欠片もなかった。
・・・なぜ指令センターは、私の護衛にこの人を寄こしたのか?
憲兵隊の草刈りも始まるし、色々混乱しているのは解るけど・・・
「あのー、 ロタちゃんのおっぱい触っても良いですか?」
初対面でいきなりこんな事を言ってくるド変態感。
控えめで清楚な声質が、ド変態感を陰な方向へ増幅させた。
そう、この陰な感じは、間違いなく秘密結社関係者だ。
そんな事だからうちの結社同盟は、百合同盟とか揶揄されるのだ。
「ダメです」
「え~、あくまで形式的な質問ですよ。綺麗なおっぱいの人にはみんなに聞いてるんですよ」
さらにド変態じゃないか!
ものすごく残念がる、ガラパゴスの美女さんの背後に、目を惹く車が停まっていた。
「もしかしてあれに?」
丸っこくて小さな車だ。
「私のお姫様、それじゃあ乗ってください♪」
お姫様・・由良穂香が姫巫女候補生と言う事は、秘密なはずだが、指令センターが護衛を頼む者と言えば、姫巫女候補生が多いのは事実だ。
姫巫女候補生が狙われるのは、最近始まった事ではない。
【由良穂香誘拐未遂事件】は、情報通の組織なら知っている情報なのだろう。
ガラパゴスの美女さんは車のドアを開け、エスコートした。
ドアが後ろ側に開くスーサイドドアには、ちょっと特別感があったが、どう見ても護衛用とは思えない。
・・・かなり目立つし
まるで今から遊園地の乗り物に乗る子どもの様に、運転席に乗ったガラパゴスの美女さんは、ニコっと微笑むと言った。
「私の愛車のスバル360です」
「シートベルトがないんですが?」
「つけなくても、昔の車だから大丈夫なんです」
狭い車内に、香しいガラパゴスの美女さんの香りが満ちていた。
独特な香りがした。今までで出会った事がない香りだ。
慣れれば悪くはない香りかも知れない。
スバル360は、不安を感じる古めかしいエンジン音を響かせながら、ホテルを後にした。
つづく
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