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3章 我が忠実なる家臣団
5話 魂を失くした人
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由良穂香に『パターン黒』と呼ばれた彼が、
公園を歩いている時に、
背後で起こった拍手と歓声に振り向いていたら、
話は変わったかも知れない。
その拍手と歓声の中心に、
彼の逃した獲物・由良穂香がいたのに・・・。
彼は足早に、逃した獲物から遠ざかって行った。
彼が急いだ先は、この公園の奥にある池。
パターン黒は、冷静さを装いながら、
公園の池をぼんやり眺めている奴を発見した。
「そこで何してる?」
奴はパターン黒の声に振り返った。
数秒、「誰だよ?」と眼をした後、再び池に視線を戻した。
そして、ホットドックの大食い選手権か?と思うほど、
奴は次から次へとホットドックを、口に運んだ。
真面目なだけが取り柄だが、大食いだけは誰にも負けない。
そんな雰囲気だ。
しかし、その食べ方は、常軌を逸しいている何かを感じた。
人としての箍が外れてしまった気配だ。
パターン黒は薬物使用を疑った。
由良穂香誘拐計画を練っていた時は、
完全に普通のサラリーマンに見えたのに。
奴は、ホットドックを1つ差し出した。
「ありがとう」
「1個1万円だ」
奴が言ったので、パターン黒が、1万円を渡すと、
「えっ?」
と奴は一瞬驚いた後、1万円を受け取った。
奴の様な人間は貴重だ。
非合法活動を実行してくれる優秀な人間は、
表の世界では、ほぼ存在しない。
真面目で信頼できる人間は、
表の世界で十分やっていける。
となると裏の世界で真面目で信頼できる人間となると、
なんらかの訳があって、仕方なく裏にいる人間だ。
それはかなり貴重な存在だ。
奴はその貴重な人材だった。
一見、真面目なサラリーマンに見える奴は言った。
「乗るか?一度乗ってみたかったんだ」
スワンボートに、野郎二人で?
単独行動の時は、気配を薄めることが出来るが
真面目なサラリーマンと並ぶと、
秘密を保有している人間特有の匂いが出てしまう。
パターン黒は躊躇したが、
人に聞かれると不味い話をするには、悪くない。
と、奴とスワンボートに乗り込んだ。
乗り込むとき、日に焼けたバイトの女子にチケットを手渡した。
ビーチバレーでもやってそうな、陽の当たる場所の住人だ。
そんな女子に、平日の午前中にスワンボートに乗る、
野郎2人の姿はどう映っているんだろう?
「あちらの6番目のボートです」
ビーチバレーな女子は笑顔で言った。
「O(≧∇≦)O イエイ!!」
と、箍の外れた奴は笑顔ではしゃいだ。
箍の外れた奴に合わせて、ビーチバレーな女子も
「O(≧∇≦)O イエイ!!」
と対応してくれた。
どこかの異空間が開くのではないかと思う程の組み合わせに、
パターン黒は寒気を覚えた。
ハイテンションのまま奴はスワンボートに乗り込むと、
これでもかと思いっきり漕ぎ始めた。
「おい・・ちょっと・・・」
と声を掛けた、奴の目は焦点が合っていない様な、
どこを見ているのか解らない様な目だった。
スワンボートは、猛スピードで池を疾走した。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「いや別に・・・」
「話・・・由良穂香の件だろ」
「ああ」
「悪い・・・・あの時、ふとこの池で泳ぎたくなってな・・。」
「人質をほったらかして?池で泳いだと?」
「ああ、その後さらに、海でも泳ぎたくなって、
連中と一緒に川を海に向かって泳いだ。
海に着いた時には、俺以外は溺れ死んでたよ。
助けを請う声を何度も聞いたが、助ける気がしなくてね。
みんな見捨てたよ。」
「・・・」
憲兵に見つかって、
何らかの薬物を投与されて、精神を破壊されたのか?
しかし、憲兵がそんな事するか?
するとしたら、由良穂香のバックの連中?
「そう言えば、あのパシリの、
タルタルソースの車を持ってきた奴は、
いなかったな・・・あいつどこ行ったんだろ?」
あのパシリ!?
パターン黒は、スマホでパシリの写真を探った。
こいつか・・・
冴えないパシリ感いっぱいの少年だ。
身元不明の少年。
この種の仕事に身元不明は、珍しくはない。
それ以外は、特別怪しい所はなかった。
「おい!おい!おい!」
スワンボートは、ありえないスピードで、
スワンボートの乗り場に向かって突進していた。
パターン黒は、突っ込む寸前に、池に飛び込んだ。
「ガシャーン」
スワンボートが衝突する音と共に、
馬鹿笑う奴の声が、平和な公園に響いた。
それは、異常な程大きな笑い声だったが、
数秒後、笑い声は止まった。
「おい!」
パターン黒はスワンボートに乗り込み、
奴の身体を揺さぶったが、すでに息はしていなかったが、
顔は爆笑していた。
笑い死に・・・
救急車で運べれた先の医者は、
「ショック死」と診断した。
そして、奴の体内から薬物は検出されなかった。
笑い死に・・・
秘密な世界では、
人生の終わらせ方も不可思議な事が多いのも事実だ。
つづく
秘密結社な小説への御来訪、
ありがとうございます。 [壁]‥) チラッ
公園を歩いている時に、
背後で起こった拍手と歓声に振り向いていたら、
話は変わったかも知れない。
その拍手と歓声の中心に、
彼の逃した獲物・由良穂香がいたのに・・・。
彼は足早に、逃した獲物から遠ざかって行った。
彼が急いだ先は、この公園の奥にある池。
パターン黒は、冷静さを装いながら、
公園の池をぼんやり眺めている奴を発見した。
「そこで何してる?」
奴はパターン黒の声に振り返った。
数秒、「誰だよ?」と眼をした後、再び池に視線を戻した。
そして、ホットドックの大食い選手権か?と思うほど、
奴は次から次へとホットドックを、口に運んだ。
真面目なだけが取り柄だが、大食いだけは誰にも負けない。
そんな雰囲気だ。
しかし、その食べ方は、常軌を逸しいている何かを感じた。
人としての箍が外れてしまった気配だ。
パターン黒は薬物使用を疑った。
由良穂香誘拐計画を練っていた時は、
完全に普通のサラリーマンに見えたのに。
奴は、ホットドックを1つ差し出した。
「ありがとう」
「1個1万円だ」
奴が言ったので、パターン黒が、1万円を渡すと、
「えっ?」
と奴は一瞬驚いた後、1万円を受け取った。
奴の様な人間は貴重だ。
非合法活動を実行してくれる優秀な人間は、
表の世界では、ほぼ存在しない。
真面目で信頼できる人間は、
表の世界で十分やっていける。
となると裏の世界で真面目で信頼できる人間となると、
なんらかの訳があって、仕方なく裏にいる人間だ。
それはかなり貴重な存在だ。
奴はその貴重な人材だった。
一見、真面目なサラリーマンに見える奴は言った。
「乗るか?一度乗ってみたかったんだ」
スワンボートに、野郎二人で?
単独行動の時は、気配を薄めることが出来るが
真面目なサラリーマンと並ぶと、
秘密を保有している人間特有の匂いが出てしまう。
パターン黒は躊躇したが、
人に聞かれると不味い話をするには、悪くない。
と、奴とスワンボートに乗り込んだ。
乗り込むとき、日に焼けたバイトの女子にチケットを手渡した。
ビーチバレーでもやってそうな、陽の当たる場所の住人だ。
そんな女子に、平日の午前中にスワンボートに乗る、
野郎2人の姿はどう映っているんだろう?
「あちらの6番目のボートです」
ビーチバレーな女子は笑顔で言った。
「O(≧∇≦)O イエイ!!」
と、箍の外れた奴は笑顔ではしゃいだ。
箍の外れた奴に合わせて、ビーチバレーな女子も
「O(≧∇≦)O イエイ!!」
と対応してくれた。
どこかの異空間が開くのではないかと思う程の組み合わせに、
パターン黒は寒気を覚えた。
ハイテンションのまま奴はスワンボートに乗り込むと、
これでもかと思いっきり漕ぎ始めた。
「おい・・ちょっと・・・」
と声を掛けた、奴の目は焦点が合っていない様な、
どこを見ているのか解らない様な目だった。
スワンボートは、猛スピードで池を疾走した。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「いや別に・・・」
「話・・・由良穂香の件だろ」
「ああ」
「悪い・・・・あの時、ふとこの池で泳ぎたくなってな・・。」
「人質をほったらかして?池で泳いだと?」
「ああ、その後さらに、海でも泳ぎたくなって、
連中と一緒に川を海に向かって泳いだ。
海に着いた時には、俺以外は溺れ死んでたよ。
助けを請う声を何度も聞いたが、助ける気がしなくてね。
みんな見捨てたよ。」
「・・・」
憲兵に見つかって、
何らかの薬物を投与されて、精神を破壊されたのか?
しかし、憲兵がそんな事するか?
するとしたら、由良穂香のバックの連中?
「そう言えば、あのパシリの、
タルタルソースの車を持ってきた奴は、
いなかったな・・・あいつどこ行ったんだろ?」
あのパシリ!?
パターン黒は、スマホでパシリの写真を探った。
こいつか・・・
冴えないパシリ感いっぱいの少年だ。
身元不明の少年。
この種の仕事に身元不明は、珍しくはない。
それ以外は、特別怪しい所はなかった。
「おい!おい!おい!」
スワンボートは、ありえないスピードで、
スワンボートの乗り場に向かって突進していた。
パターン黒は、突っ込む寸前に、池に飛び込んだ。
「ガシャーン」
スワンボートが衝突する音と共に、
馬鹿笑う奴の声が、平和な公園に響いた。
それは、異常な程大きな笑い声だったが、
数秒後、笑い声は止まった。
「おい!」
パターン黒はスワンボートに乗り込み、
奴の身体を揺さぶったが、すでに息はしていなかったが、
顔は爆笑していた。
笑い死に・・・
救急車で運べれた先の医者は、
「ショック死」と診断した。
そして、奴の体内から薬物は検出されなかった。
笑い死に・・・
秘密な世界では、
人生の終わらせ方も不可思議な事が多いのも事実だ。
つづく
秘密結社な小説への御来訪、
ありがとうございます。 [壁]‥) チラッ
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