ティラノザウルスに追われながら

健野屋文乃(たけのやふみの)

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白亜紀にて

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メグミ・シュミット博士は、白いキューブな部屋で、ずっとモニターを眺めていた。


彼女は、メグミ・シュミット博士、17歳。

タイムパトロールじゃない方の人間だ。


ここの時代は白亜紀、恐竜たちが跋扈する時代だ。


白亜紀に人類がいるらしい!

との噂を信じて、この時代にやってきた。


「わたしがモテないのは、わたしのせいじゃない。時代のせいだ!」


彼女は日頃から思っていた。

知能の高さと幸せは比例しない。むしろ反比例してしまう。

そんな残酷な時代に失望して、タイムマシーンに乗って白亜紀にやってきたのだ。


白いキューブな部屋のモニターには、人類が映っていた。

そう白亜紀に人類がいたらしい。


めっちゃ好みのタイプの少年だ。

ここまでの好みタイプは、いままで在った事がない!


メグミ・シュミット17歳は、めっちゃにやけた。


革の服を着ている。衣服と言うより革の鎧って感じだ。

きっと恐竜の革だろう。原始的なイメージとはだいぶ違う。

黒曜石の槍を手にしていた。



☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆



いまぼくは、暴君ティラノザウルスに追われている。

黒曜石で出来た槍しかないのは、かなりの危機だ。


きっと珍しい生き物(ぼく)に、奴も気合が入っているのだろう。


深い森の中、転んでもしたら生死に関わる。

いや!逆に転んで見ようか?


ティラノザウルスだって、急には止れない。

踏まれる危険性もあるが、このままだと確実に死ぬ。


目の前に沼地が見えた。

あれなら踏まれても生き残るチャンスがある!


俺は沼地に入ると転んでみた。

すぐ上を恐ろしいティラノザウルスが、駆けて行くのが解った。


踏まれずに済んだ!

ぼくはすぐに今来た道を戻り始めた。

気づかれませんように!


ぼくは後ろを振り返る事無く、セコイヤの森に向けて疾走した。

そしてセコイヤの巨木に捕まり、崖を登る要領で必死で登った。


10メートルを超えるティラノザウルスから、逃れるためには、60メートルに達するセコイヤの巨木に登るしかない。


大丈夫、大丈夫、大丈夫。

ぼくは願った。


やっとティラノザウルスから逃れられる距離に到達した。

「はぁ」

凶暴な世界でも、この高さから見る世界は美しい。


目の前に、何故か浮いている大きな箱があった。

「なんだこれは?」


その箱の中から、少女が出てきた。

「はーい、メグミ・シュミット博士の登場だよ」

「メグミ・・・ット?」


ぼくは現状を把握しようとしたが、無理だった。

解った事は、その少女がとてつもなく可愛いと言う事だけだった。

こんな可愛い少女を今まで見た事がない。


「クリアおめでとう。これはあたしからのプレゼントだよ」

と何か棒の様な物を渡された。


「名刀・村正だよ。これで君の生存率は上がるはずだよ」


まったく意味が解らないが、貰える物は貰っておこう。


「それじゃーね。あなたの健闘を祈ってるよ♪」

そう言うと、メグミットは、箱の中に入って、そしてその箱は消滅した。


「なんだ?」

世の中には、解らない事ばかりだ。


どーん。

セコイヤの巨木が大きく揺れた。

少女の可愛さに、油断していた。


ぼくはセコイヤの巨木から、まっさかさまに落下し始めた。

木の下には、セコイヤの巨木に体当たりしているティラノザウルスが、ぼくの姿を確認して、嬉しそうに口を開けた。


落下の最中、村正と呼ばれる棒を覆っていた物が、落ちて、中にしまってあった棒が露わになった。

それは見た事がない輝きを放っていた。


その穂先は槍のように鋭利になっていた。

「これはきっと武器だ!」

ぼくは村正を構えると、そのままティラノザウルスに向けて落下した。


その村正の輝きに、ティラノザウルスは「あれ?何かが違う!」って表情をしたが、すでに遅かった。


ぼくはその村正で、ティラノザウルスを突き刺した。


すごい威力だ。こんな凄い武器見た事がない。

ティラノザウルスは、ズドーンと地面に倒れた。


予想外のティラノザウルスの敗北に、木陰から見ていた小動物たちが騒然とした。


多分、人類でティラノザウルスに勝ったのは、ぼくが初めてだろう。


ぼくはメグミットがいたセコイヤの巨木を見上げた。

しかし、浮遊する箱は現れる事はなかった。


「夢だったのか?」

「違うよ」


ぼくの背後から可愛い声が聞こえた。


その声の主は、ぼくの背後から抱き着くと、

「あなたを絶対離さない!」


なんか怖い。  


       

つづく


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