ねじ巻き九六九(クロック)

健野屋文乃(たけのやふみの)

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8話 伝説を手に入れたよ。

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穂波ちゃんと僕が、黄金に目が眩んだ様な目で、黄金の甲冑を纏う武者を見ていたのかも知れない。


「館の守り人と黒猫よ、残念です」

透き通った妖精の声が響いた。


「えっ何?」


と穂波ちゃんが言う間もなく、隠し扉の向こう側にいた黄金の武者は、隠し扉の向こうに消えてしまった。


穂波ちゃんは、急いで、隠し扉をこじ開けた。


そこは人一人がやっと入れるほどの、隠し部屋があった。


穂波ちゃんは、すぐに隠し部屋の壁や床を調べたが、どこかへ通じる通路の形跡など、何も発見できなかった。


「消えちゃった・・・しょぼんだよ」


穂波ちゃんはポツリと言った。


しょぼんな穂波ちゃんに、贈った一句。



しょぼんな穂波ちゃんは、気落ちしたらしく、

「今日はいいや」

と伝説作りは中止になった。

穂波ちゃんは、移り気な女の子なのだ。


「ん?穂波ちゃん見て!忘れ物かな?」

隠し扉の壁に、黄金の薙刀が立てられていた。


「私、子どもの頃薙刀習ってたんだよ」


穂波ちゃんは、黄金の薙刀を持つと構えた。

「穂波ちゃん凛々しい♪」

穂波ちゃんは、とても様になっていた。


そこに、ガチャ!

と急に隠し扉が開くと、忘れ物を取りに来たらしい黄金の武者が現れた。

そして、薙刀を構えている穂波ちゃんと、視線を合わせた。

部屋に気迫が満ちたのは、黒猫の僕にも解った。

そして黄金の武者は、静かに腰の刀に手をかけた。


数秒だけ、穂波ちゃんと黄金の武者との間に沈黙が流れた。

黄金の武者が刀を抜くと同時に、穂波ちゃんは薙刀を振り下ろした。


しかし穂波ちゃんの薙刀は空を切り、黄金の武者の刀も空を切った。

空を切ったと言えばカッコいいが、明らかに空振りだった。


えええええええ、この二人カッコだけ?


構えている姿は、まさに達人だが、振り抜く姿は幼児の遊び並みだった。


でも、2人の間で何か通じたのか、お互いの健闘を讃えるように抱き合った。

その姿はまるで激しく格闘した後かのように様になっていた。

さすが美少女。


そして、黄金の武者はちょっとだけ頷くと、隠し扉の奥へと帰って行った。


「えへ♪もらっちゃった」

穂波ちゃんは微笑んだ。


こうして僕らは、オルゴールの妖精伝説を手に入れた。



おしまい


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