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19 新しい物語の章

エルフとぼくの物語

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エルフにとって、12年と言うのはどのくらいの時間の流れなのだろう。

人間であるぼくにとっての12年とは、意味合いが違ってくるかも知れない。


人間がファンタジーな生き物と共存するようになって、まだ12年。


ぼくは今年から、深い森の道を通って異種間中学校に通っている。


「ケータロウ、おはよう」


振り向くと、エルフのイリスが背後にいた。

エルフのイリス。リスみたいな女の子だ。

ぼくの隣の家に住んでいる。

隣と言っても、果樹園を隔てて隣だから、かなり離れている。


人間の12歳に比べれば、12歳のエルフは幼く見える。

同級生と言うより、妹が出来た感じだ。


「ケータロウ、あの笹くれ」

ちょっと高い場所にある笹の実を、イリスに渡した。

イリスなら、魔法は使えば楽に獲れるとは思えるのだが。


笹は仙人の食べ物だと古い文書には書かれていた。

もしかしたらその仙人と言うのは、エルフの一族だったのかも知れない。


イリスは笹の実を美味しそうに食べた。

ぼくも食べた事はあるが、美味しくはない。


さて目の前には通学路最大の難所、赤煉瓦のトンネルがあった。

別にまだ朝だしそんなに危なくはない。


それでもぼくは警戒して歩いた。

赤煉瓦のトンネルの天井から水が滴り落ちていた。


「ぴちゃん」

大きめの音が響いた後、スライムが現れた。

最弱キャラとは言え、ぼくらのとっては強敵だ。


「おおお、人間のガキとエルフのガキか」

最弱キャラの癖に、かなり悪そうだ。

とりあえず、ぼくは剣を構えた。


でも

「ここはあたしに任せて」

イリスは魔法使いだ。


「ほお、お嬢ちゃんが相手知れくれるのかい?」

まだスライムは悪そうだ。最弱のくせに。


イリスは魔法の杖を握り、魔法を唱えた。

「ハズーイ」

「?」

数秒の沈黙の後、スライムたちは突然恥ずかしがり始めた。


「なんで俺ら全裸?」

「めっちゃ恥ずかしいんだけど」

「こんな状態で戦える訳がない!」

「とりあえず服着てから出直そう」

等々。


スライムたちは、深い森の中へと逃走した。


イリスは説明した。

「魔法【ハズーイ】とは、羞恥心をマックスにしてしまう、恐ろしい魔法なのだ」


12歳のイリスが、習得して良い魔法なのだろうか?


イリスは、ぼくと目を合わせると

「はっ!しまった」

「どうした?」

「ケータロウ、あたし、パンツ履くの忘れてる」

「ええええええええ」

「一緒に戻ろう、誰かに見られない様にあたしを守って」

「う、うん」


ぼくらは急いでイリスの家に戻った。


元々エルフには、パンツを履く概念がない。

人間社会と融合していく過程で、パンツを履き始めたのだ。


こうやって異種同士は、少しずつ融合していくのだろう。



 

          完


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