MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達

健野屋文乃(たけのやふみの)

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18 楽しい思い出の章

自宅警備兵団と伯爵家の三姉妹 EP2 可愛いだけのただ美少女たちよ

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異世界の夜道はとても暗いし、きっと危ない。

ぼくは多少警戒しながら、歩いた。


「わたしは朱里、常盤伯爵邸のメイドをしてるの」

と酒場の店員は告げた。


「ぼくは吉岡凛太郎」

「あら可愛い。凛って、女の子みたい。凛ちゃんって呼んでいい?」

「ダメです、ちなみにぼくがいたとある場所では『女みたいな名前だな』的な事を言うと不幸になるんです」

「えええええ、凛ちゃん可愛いのに」


ぼくは朱里さんと上手い事話せているぽい。

誰かとちゃんと話したのって、いつ振りだろう。


何かぼくを拘束していた呪いのような物を、元の世界に置いてきた気分だ。


ぼくらはかなり歩いた。

元いた世界で、どれだけ歩いてないのかを思い知らされた。


朱里さんにとっては大した事ではなさそうだ。

そしてやっと、常盤伯爵邸だ。

ファンタジー世界によくある、現実とはちょっと違う和風な門だ。


ぼくの常識的なレベルの豪邸をはるかに超える豪邸だ。

小さな要塞と言っても良い。


これは違う!

ぼくの言う自宅警備とは全然違う!


「えっ?あのぼくが言った自宅警備って言うのはですね、ネットのあれでして」

「ねっと?網?」


いや、いや、いや、そうじゃなくて、えーと、ここの警備をしろと?


「ささ行きましょう。凛ちゃんならお嬢様たちも気にいると思います」

「お嬢様たち?」

「可愛いだけのただ美少女たちよ」


可愛いだけのただ美少女たち、だと!

いや待て、現実を見ろぼく!

絶賛引きこもり中の陰キャなぼくが、美少女たちと会話なんて出来るのか?!


ちょっと不安になったぼくの腕を、朱里さんが掴んだ。

かなり強く。そして、

「さあ行きましょう」


朱里さんは大きな門扉を魔法で開けた。

「かなり厳重な魔法なんだけどね、開けれる奴は開けれるのよね」


門扉の向こうには、整備されていないであろう庭が広がっていた。

ほぼ荒野だ。


その荒野に蠢く者が、

「あれはゴブリン!」

ぼくが剣に手をかけると、朱里さんが、

「大丈夫、あれはこの庭の管理者、伯爵側の魔物よ。信頼は出来ないけどね」


ぼくは剣から手を離した。

それにしてもすごい剣だ。

掴んだだけで何か凄い圧があった。


かなり長い事歩くと、お屋敷が見えてきた。

本来なら馬車で歩くであろう距離だ。


お屋敷の門も魔法であける仕組みらしい。

かなり厳重なのかな?


ドアを開けると、何かが飛んできた。魔法少女ぽい。

「え?」

「大丈夫」


ぼくと一目あった後、朱里さんのスカートの中にピンクの髪の少女が入った。

そしてスカートの中から

「朱里さんお帰り、この人誰?」

朱里さんは、スカートの中に入られたにも関わらず、平然と、

「自宅警備兵団の方よ」

とぼくを紹介した。


自宅警備兵団と言われるのは、恥ずかしいのだが!


「ももこさま、殿方の前でパンツを脱がそうとしないで!」

朱里さんをスカートを押さえた。

朱里さんも、さすがに恥ずかしいらしいのか、顔を赤らめた。


やたら広いフロアに赤毛の少女が現れた。

「何?新しい人?」

「はい自宅警備兵団に属していた人です」

嘘じゃないし、間違いはないのだが、恥ずい。


「こちら梅子さま」

「梅子じゃなく小梅!」

「でも」

「はあ、姉が桜子で妹が桃子、なのになんでわたしだけ梅子なのよ!

ダサすぎるでしょう!だから新人、あなたは小梅ってちゃんと呼ぶのよ」


「はい」


「あら新しい人?こんにちは桜子です」

やたら広いフロアに現れた桜子さんは、めっちゃ桜子さんだった。

立ち振る舞いが華やかだ。


この3姉妹。

元いた世界で例えると、多分中高生ぐらいだろう。

そしてメイドの朱里さんは、女子大生って感じかな。



つづく


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