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17 あいよりあおい章

計算上、そこに誰かいる!

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夏休みに入った大学は静まり返っていた。

その中でもさらに計算室は静かだった。


「部屋のクーラーが壊れてね、ここで涼んでるの」

ビーチサンダルに短パンTシャツ姿の那由多なゆた女史は言った。

那由多女史の肌は、海に行った形跡など皆無と言う程真っ白だった。


大学の計算室にはわたしの他に、那由多女史が、お弁当を食べていた。

那由多女史が作った梅干し弁当だろう。

ご飯の上に梅干しがずらーっと敷かれ、表面上の見た目は真っ赤なお弁当だ。


最初は何事か?と思うお弁当の色だ。



わたしは自称天才の大学院生だ。

現在、わたしはスーパーコンピューター不可説不可説転を、操作している。


スーパーコンピューター不可説不可説転が熱を帯びているのが解った。

これは素晴らしい機械だ。

3次元空間に生きる人間では、見ることも聞くことも出来ない存在を、計算してくれる。


4次元だって5次元だって、6次元だって・・・・計算上は存在する世界だ。

3次元空間に生きる人間は、その存在を計算上でしか探知できないのだ。


自称天才プログラマーでもあるわたしは、より現実的に計算上は存在する生命体を探知するプログラムの開発に成功したのだ。

それが可能になったのは、スーパーコンピューター不可説不可説転の性能が急速にあがったお蔭でもあるのだが。


計算から3時間ぐらいたったころ、不可説不可説転は、計算結果を算出した。

その結果は、わたしの背後に計算上は存在する生命体が、何かの小さな箱を持って立っている事が解った。


そう!わたしのすぐ後ろだ!


それは計算上しか解らない生命体なので、見えるはずはない事は解っていたが、わたしは振り向いた。


えっ!見えた?


わたしは驚いた。


でも良く見るとそこには、お弁当箱を持った那由多女史が立っていた。


「よっ♪」


那由多女史は声を掛けて来た。

「那由多女史が、計算上は存在する生命体だったとは!」

「ん?計算上?」

那由多女史はとぼけたが、間違いない。



「商店街でアイス買って来るけど、何が良い?フルーツ系なら何でもあるけど」

ビーチサンダルに短パンTシャツ姿の那由多女史は言った。

「蜜柑」

わたしが言うと那由多女史は、

「良いね~わたしも蜜柑にしよう♪」

そう言うと計算室を退出した。


不可説不可説転のモニターを見ると、計算上存在する生命体は居なくなっていた。


どちらのせよ、この事がきっかけで、わたしは那由多女史に興味を持ち、那由多女史に恋をし、那由多女史に告白して結婚に至った事は間違いない事実だった。


しかし、結婚して3年経過したが、まだ那由多女史が、計算上は存在する生命体である確証は得れれていない。



             完
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