127 / 186
14 かなうの章
夜空には、知ってる月が輝いていると言うのに。
しおりを挟む
公園のベンチで寝落ちしそうになる寸前、
「あの丘を越えれば、あなたの願いが叶う」
と誰かが耳元で囁いた。
ぼくは目を開け、見慣れない景色に、
「ここはどこだろう?」と数秒、自問自答したのがいけなかったらしい。
耳元で囁いた誰かの姿は既になかった。
そして、この異界で、ぼくが生まれ育った世界の言葉をしゃべる存在に驚いた。
人は異なる人を迫害したがる。
その迫害の中で聞いた懐かしい言葉に、ぼくは癒された。
こんな事で癒されるなんて、嘆かわしい。
☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆
100キロは歩いたんじゃないかと思う。
身体に疲労が充満していた。
丘を越えると辿り着くと思っていた。
やっぱり無理か。
知らない街。
知らない人。
知らない言葉。
夜空には、知ってる月が輝いていると言うのに。
『どんな強固な城にも必ず抜け道はある』
歴史探究部の女子の先輩が、ぼくに行ってくれた言葉だ。
そう、この異界にも必ず抜け道があるはずだ。
「はぁ~先輩に会いたい~めっちゃ先輩に会いたい~」
ぼくは言葉にして呟いた。この世界では意味のない音だろう。
「はぁ」
ぼくが書こうとしていた『パラレルワールドに関する論文』
決して異界に来たかった訳ではない。
でも興味を持ってしまった事が、ぼくを異界に呼び寄せたのかも知れない。
「はぁ」
知らない街では、どうやら何かの祭りをやっているようだ。
人々の表情がかなり陽気だ。この雰囲気なら迫害はされないだろう。
ぼくはちょっとホッとした。
空腹なぼくは、街外れの個人経営のハンバーガー屋に入った。
店内の籠の中のインコが、ぼくを見ると羽を羽ばたかせた。
鳥好きなぼくでも、疲れて相手をする気力はない。
この異界は現世と同じような硬貨を使っていて、よく見れば違うのだが、たかが硬貨を、わざわざ見る人などいない。
そして、これで硬貨は底をつく。
最後の食事になるだろう。
ぼくはハンバーガー屋の店員に小声で何かを呟き、メニューを指差した。
可愛らしい女子の店員だ。現世での部活の女子の先輩に似ていた。
ぼくの心は少し躍った。しかし残念ながらここは異界。
言葉なんて通じない。
店員は、何かの言葉を発すると、当然の様に、ぼくの頭を撫でた。
なぜかは解らない。
何かの習慣か?
何かの挨拶か?
何かそんなお祭り?
ぼくは愛想笑を浮かべ誤魔化した。
女子の先輩似の店員は、特別疑う事もなく、厨房に向かった。
まさか異界人がいるなんて、誰も思わないだろう。
店員がハンバーガーとドリンクを持ってきた。
そして自分の頭を差し出した。
これはどういう意味だ?
頭を撫でろって事か?
お祭りの決まり事か?
ぼくは店員の頭を撫でてみた。
店員は嬉しそうに、何かのお礼を言った。多分。
正解だったらしい。
女子の先輩に似た店員は、ポテトも持ってきていた。
『サービスだよ』
的なニュアンスだと思う言葉を発した。
知らない異界に来たとしても、ぼくの味方になってくれる人は、同じようなタイプらしい。
この街に来るまで、敵意に満ちた人々とばかり出会って来た。
ぼくは、生まれて初めて迫害と言うものを経験した。
でも運が、ぼくに味方し始めたのかもしれない。
どうやら指をさしたハンバーガーは、チーズバーガーだったらしい。
これもついてる?
ぼくはハンバーガーは、チーズバーガーと決めていた。
ぼくは焼きたてのチーズバーガーを食べた。
香ばしい良いチーズだ。
ケチャップとの相性が最高だ。
ドリンクは何かのミックスジュースらしいが、特定は出来ない味だ。
ぼくは深い息を吐くと、今後の事を考えた。
その時!
「西の山の洞窟へ行け!抜け道!抜け道!」
と声がした。
それがインコの声だとすぐ解った!
その言葉を理解できるたのは、ぼくだけだったようだ。
店の人はインコが意味不明の言葉を発しても、気にしない。
見つかった!どんな強固な城にも必ず抜け道はある。
ぼくが店を出ようとすると、女子の先輩似の店員が、手をあげた。
これはハイタッチ?
ぼくは先輩似の店員とハイタッチをした。
可愛い店員は微笑んだ。
どうやら正解だったようだ。
完
「あの丘を越えれば、あなたの願いが叶う」
と誰かが耳元で囁いた。
ぼくは目を開け、見慣れない景色に、
「ここはどこだろう?」と数秒、自問自答したのがいけなかったらしい。
耳元で囁いた誰かの姿は既になかった。
そして、この異界で、ぼくが生まれ育った世界の言葉をしゃべる存在に驚いた。
人は異なる人を迫害したがる。
その迫害の中で聞いた懐かしい言葉に、ぼくは癒された。
こんな事で癒されるなんて、嘆かわしい。
☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆
100キロは歩いたんじゃないかと思う。
身体に疲労が充満していた。
丘を越えると辿り着くと思っていた。
やっぱり無理か。
知らない街。
知らない人。
知らない言葉。
夜空には、知ってる月が輝いていると言うのに。
『どんな強固な城にも必ず抜け道はある』
歴史探究部の女子の先輩が、ぼくに行ってくれた言葉だ。
そう、この異界にも必ず抜け道があるはずだ。
「はぁ~先輩に会いたい~めっちゃ先輩に会いたい~」
ぼくは言葉にして呟いた。この世界では意味のない音だろう。
「はぁ」
ぼくが書こうとしていた『パラレルワールドに関する論文』
決して異界に来たかった訳ではない。
でも興味を持ってしまった事が、ぼくを異界に呼び寄せたのかも知れない。
「はぁ」
知らない街では、どうやら何かの祭りをやっているようだ。
人々の表情がかなり陽気だ。この雰囲気なら迫害はされないだろう。
ぼくはちょっとホッとした。
空腹なぼくは、街外れの個人経営のハンバーガー屋に入った。
店内の籠の中のインコが、ぼくを見ると羽を羽ばたかせた。
鳥好きなぼくでも、疲れて相手をする気力はない。
この異界は現世と同じような硬貨を使っていて、よく見れば違うのだが、たかが硬貨を、わざわざ見る人などいない。
そして、これで硬貨は底をつく。
最後の食事になるだろう。
ぼくはハンバーガー屋の店員に小声で何かを呟き、メニューを指差した。
可愛らしい女子の店員だ。現世での部活の女子の先輩に似ていた。
ぼくの心は少し躍った。しかし残念ながらここは異界。
言葉なんて通じない。
店員は、何かの言葉を発すると、当然の様に、ぼくの頭を撫でた。
なぜかは解らない。
何かの習慣か?
何かの挨拶か?
何かそんなお祭り?
ぼくは愛想笑を浮かべ誤魔化した。
女子の先輩似の店員は、特別疑う事もなく、厨房に向かった。
まさか異界人がいるなんて、誰も思わないだろう。
店員がハンバーガーとドリンクを持ってきた。
そして自分の頭を差し出した。
これはどういう意味だ?
頭を撫でろって事か?
お祭りの決まり事か?
ぼくは店員の頭を撫でてみた。
店員は嬉しそうに、何かのお礼を言った。多分。
正解だったらしい。
女子の先輩に似た店員は、ポテトも持ってきていた。
『サービスだよ』
的なニュアンスだと思う言葉を発した。
知らない異界に来たとしても、ぼくの味方になってくれる人は、同じようなタイプらしい。
この街に来るまで、敵意に満ちた人々とばかり出会って来た。
ぼくは、生まれて初めて迫害と言うものを経験した。
でも運が、ぼくに味方し始めたのかもしれない。
どうやら指をさしたハンバーガーは、チーズバーガーだったらしい。
これもついてる?
ぼくはハンバーガーは、チーズバーガーと決めていた。
ぼくは焼きたてのチーズバーガーを食べた。
香ばしい良いチーズだ。
ケチャップとの相性が最高だ。
ドリンクは何かのミックスジュースらしいが、特定は出来ない味だ。
ぼくは深い息を吐くと、今後の事を考えた。
その時!
「西の山の洞窟へ行け!抜け道!抜け道!」
と声がした。
それがインコの声だとすぐ解った!
その言葉を理解できるたのは、ぼくだけだったようだ。
店の人はインコが意味不明の言葉を発しても、気にしない。
見つかった!どんな強固な城にも必ず抜け道はある。
ぼくが店を出ようとすると、女子の先輩似の店員が、手をあげた。
これはハイタッチ?
ぼくは先輩似の店員とハイタッチをした。
可愛い店員は微笑んだ。
どうやら正解だったようだ。
完
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜
摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。
ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m
👨一人用声劇台本「寝落ち通話」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。
続編「遊園地デート」もあり。
ジャンル:恋愛
所要時間:5分以内
男性一人用の声劇台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる