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13 たびだちの章

ツンデレ姫は、いと可愛い。 ~彼女の好きな明太フランス~

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土曜日の朝。まだ彼女は眠っていた。

眠っている彼女は、ひたすら可愛い。


ふと小さなワンルームの部屋に、ぼくたち以外の気配を感じた。

ぼくはすぐに、女神の類だと解った。

部屋に満ちた雰囲気がね、邪悪な感じを感じなかったからだ。


この島国には800万の神々がいる。

見えるか見えないかの違いだ。


「あなたはさ~愛が足りないのよね」

そう言う女神は、手に天秤を持っていた。

天秤は平行を保ってはおらず、大きく傾斜していた。


「この軽い方があなたの彼女への愛情で、この重い方が彼女のあなたへの愛情だよ」

天秤の女神は説明した。


「要するに、ぼくより彼女の方がぼくを愛していると?」

「そうね。天秤が平行を保つのが理想、あなたには本当に愛が足りない」

「愛が足りない?」

彼女の寝顔をふと見た瞬間に、女神は姿を消した。

それでも、部屋には女神の柔らかな雰囲気が残っていた。


彼女は恋愛に関して、あまり熱くなかった。

ぼくに対して冷たさを感じることもあった。


だから、もしかすると惰性で付き合ってるのかと思ってた。


そうか、ぼくより愛してくれてたんだ。

ぼくの心は嬉しさに満ちた。


「このツンデレ姫め」

彼女の耳元で囁いて見た。 

     

それにしてもぼくには【愛が足りない】とは。

それなにり愛しているはずなのに。


まあとりあえず、彼女の好きな明太フランスでも買って来るとしよう。





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