MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
118 / 186
13 たびだちの章

永遠の友(笑)

しおりを挟む
僕は、宇宙船から碧い星を見下ろしていた。

「今度はあの星で生きてみよう」

「じゃあ俺も、お前1人じゃ不安だし」

と隣で友が言った。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



僕は敗走した。そりゃそうだろう?

相手はクラス中だよ。クラス中が敵なんだよ。


「俺の友達だと言うのなら、戦えよ!認めねぇよ!お前みたいな弱い奴」

と言う彼は、幼稚園の頃の友だ。


旅芸人の子どもらしく台詞がちょっと熱いのがあれだ。


幼稚園の時、彼と一緒に過ごしたのは3か月くらいだった。

親が旅芸人の彼は、転校を繰り返していた為だ。


幼稚園の頃の彼は、大人しいけど凛々しい子どもだった。

彼が再び同じクラスになったのは、小学校も終わりに向かう小6の事だ。


僕は始めての友に言われて、昼休みに僕を侮辱する奴らに、殴りかかった。

無駄な戦いだとは解っていたんだ。

だってクラス中が敵なんだもん。

児童も教師も味方なんていやしない。


僕は校舎を飛び出して、校外へ逃げた。

さすがに誰も追ってこなかった。


唯一僕を追いかけてきたのは、彼だった。

僕は川辺に座り込んだ。


「どうしよう、クラスの奴らをさらに怒らせてしまった。もう帰るなんて出来ない」


彼は僕の隣に座り、

「お前、弱いな。幼稚園の頃はお前の方が強かったのに」

「そうだった?」

「あの頃、お前だけ俺の味方になってくれただろ」

「ん?覚えてないけど」

「(笑)だから、お前を永遠の友だと決めたんだ」


「そんなことより、明日からどうしよう。もう学校には行けないよ」

「お前自身で落とし前をつけたら、後は俺に任せろ。悪いようにはしない」


僕はクラスの奴一人ひとりに会って、落とし前をつけた。


「すっきりした?」

「すっきりはしたけども、どうするの?」

「俺と一緒に旅に出よう」

「旅芸人の?」

「ああ、後は俺の親がなんとかしてくれる。親は軽すぎるけど信頼は出来る」


さすがの急展開に、僕は言葉を失った。


「昔、俺と別れる時、お前『僕も一緒に行きたい』って言ったよな。だから」

「覚えていたんだ」

「忘れないよ。お前を永遠の友と決めてたし。

一緒に風みたいに、世界中を回ろうぜ!」


なんて熱い台詞だ。そして暑苦しい。

芸風大丈夫か?

僕は心の奥で心配した。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「なあ、お前1人じゃ不安だっだろ」

宇宙船内で僕の友が言った。

「まあ楽しかったよ、後半の方は」



完 ( •⌄• )◞
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【短編集】月のふたり

蒼崎 旅雨
現代文学
「月の裏側にはね、二人が住んでるの」 月の裏側には何がある? を始めとした短編集。 月の重力くらいのふんわりとした夢想の物語。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Tokyo Flowers

シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...