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12 ときのすきまの章

焼き鳥の神さまとサンダーバード

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「焼き鳥の神さまを煮込むと、伝説の焼き鳥のタレが出来上がるの」


清貧美少女の絵里奈ちゃんは言った。

絵里奈ちゃんの家は、まったく繁盛していない焼き鳥屋さん。

絵里奈ちゃんは、貧乏から抜け出したいのだ。


だから「何、その嘘っぽい話は?」と、うちは思ったけど、絵里奈ちゃんはめっちゃ真剣なので、その言葉を心に仕舞った。


うちはくノ一の炉(いろり)と申します。


うちは今、その焼き鳥の神さまを追っていた。

絵里奈ちゃんの話によると、俗に言うサンダーバードの様な生き物らしい。

要は翼竜のプテラノドンと言った所だ。


うちの家に伝わる古文書にも、その存在は記されていたので、まったくの根拠はないとは言えない。大鷲を見間違えの可能性もあるが。


週末に絵里奈ちゃんと深い森に入った。


絵里奈ちゃんのお父さんは、今では普通のおっさん化しているが、実は元力士で、絵里奈ちゃんの身体能力の凄さは遺伝だろう。

みんなは知らないけど、良い身体をしていて冒険向きな身体をしている。

ちなみに、うちは絵里奈ちゃんのお尻がめっちゃ好きだ。


さて、手持ちの武器は、猟銃と捕獲用ランチャーだ。

捕獲用ランチャ―は、飛んでいても簡単に網で捕まえる事が出来る。


指笛を吹くと、野生の馬が走ってきた。

最近、うちに懐いた可愛い馬だ。


「えっ馬に乗るの?」

「うちに捕まってれば大丈夫だよ」


絵里奈ちゃんは、

「軽い気持ちで話しただけなのに、なんか大冒険になってない?」

って表情をした。


絵里奈ちゃんの優しい身体の感触を背中に感じながら、深い森に入った。


1時間ほど進むと、縄文杉の樹洞(じゅどう)が見つかった。

山鼠の歴(れっき)師匠が、住んでいる家だ。

ホントに可愛らしい山鼠なのだが、自称・深い森の主(ぬし)らしい。


「う~ん焼き鳥の神さまか?」

「あっ鼠が喋った」

「山の主クラスになると人の言葉が解るんだよ」


「もしかするとあれか?この辺を探して観ると良い。

運が良ければ飛んでるかもしれん」


そして歴師匠は、小さな容器に入れられた樹液のジュースを出してくれた。

これがめっちゃ甘くて美味しいのだ。


絵里奈ちゃんは、再び

「軽い気持ちで話しただけなのに、なんか大冒険になってない?」

って表情をした。


でも、うちはそれどころではない。

馬に乗って後ろから絵里奈ちゃんに、抱きしめられたくて仕方ないのだ。


場所を教えてもらい、うちらは深い森をさらに奥へと進んだ。

歴師匠に言われた地点に着くと、絵里奈ちゃんが持参した焼き鳥を焼いた。

絵里奈ちゃん曰く、焼き鳥の神さまが好む香りらしい。

深い森に焼き鳥屋さんの煙が漂うって不思議だ。


それにしても絵里奈ちゃんの焼く焼き鳥は、とても美味しい。

明らかに元力士の親父が焼いたのより美味しい。

あの親父、焼き鳥屋さんとしての才能がないのだ。


上空に気配を感じた。凄まじい気だ。

「うちが誘い出すから、絵里奈ちゃんは捕獲ランチャーで捕まえて」

「えっ、わたしが掴まえるの?」

「絵里奈ちゃんなら出来る!」

そう言葉を残すと、うちは猟銃を構え走り出した。


大きな木に駆け上ると、上空を旋回する翼竜を見つけた。

うちに気付いた翼竜は、うちを睨み付けた。

神々しい威圧に、うちはビビったが、数発狙撃後、次の狙撃地点へ移動した

今さら後には引けない。


それを数回繰り返し、絵里奈ちゃんの捕獲ポイントへと誘導した。


ギィィィィィ!

捕獲ポイントで、何かの声が響いた。成功した?

駆けつけると、大きな網に3メートルは超える翼竜が絡まっていた。

「おい!人間!何のつもりだ!」

翼竜は激怒している。


「あなたが焼き鳥の神さまですか?」

絵里奈ちゃんの問いに

「はあ!?焼き鳥の神さまって何だよ!どんな神だよ!焼かれてんのか?」

と常識的な反応をした。うちらより常識のある翼竜らしい。


うちは説明をした。

「焼き鳥の神さまを煮込むと、伝説の焼き鳥のタレが出来るらしいす」

「はあ?!おまえら神を煮込むって、大丈夫か?神だぞ!」

「でもこの子の家の焼き鳥屋さんが全然繁盛した無くて、色々考えた結果、今に至るわけです」

「色々あるだろう!焼き鳥屋を繁盛させる方法ってのはよ!方向性全然間違てんぞ!」

翼竜はかなり呆れて、

「解った。ここで逢ったのも何かの縁だ。お前らに良いモノをやろ。」

「えっホント」

貧乏美少女は笑顔を浮かべた。その即答は若干貧乏くさいが、美少女なので許そう。

「その代りこの網を解け!」

「うん」

貧乏少女は即答した。


翼竜がくれたのは、高級焼き鳥屋さんの10万円チャージしてあるプリペードカードだ。なぜ翼竜が持っているのかは不明だが。貧乏少女は大喜びだ。


「ありがとう、焼き鳥の神さま!」

   

絵里奈ちゃんの嬉しがる姿に、うちは癒された。

だからそれで、まあいっか♪



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