MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
71 / 186
8 あやかしの章

橙子の涙 

しおりを挟む
夜空には、月より大きな彗星が輝いていた。


「あんなダメ男に都合よく遊ばれて!

もう、橙子のせいで俺の涙は枯れたわ!

あんな男諦めて、俺のもとへ来い!

そうせ彼奴は、今頃、お前じゃない、

可愛い彼女とイチャついてる!」

深夜の路上で涙目の和史が叫んだ。

すると、橙子の身体は、

橙子の意思に反して、和史の懐に飛び込んだ。


「えっ《゚Д゚》」

「俺から逃げられるとでも思った?」

和史はニヤケならが言った。

「何?」

「驚いた?

俺、人の身体を自在に操れる

能力を手にしたんだ」


「馬鹿なことを、いいから離して!

また警察呼ぶよ!」

「警察が能力を手にした俺に、

何か出来ると?ふっ、だから、もう諦めな!

橙子が、俺のこと嫌おうと、もう関係ない。

こうやって抱きしめる以上の事を求めない!」

「離して」

「離さない、俺がお前の事をしあわせにしてやる!」

「それ・・・無理だから」

「無理じゃない、いやだとしても

もう俺を止めることが出来る奴なんて

この世にいないし、ふふふふ、解ったか!

俺はもう無敵だ」


月サイズの巨大彗星が

地球圏をかすめニアミスした。

地球滅亡は、避けられたが、

巨大彗星の引力は、一部の人々の能力を、

強引に引き出し覚醒をもたらした。


橙子の意思に反して、

橙子の手が愛しそうに和史の頭を撫で、

和史の口に自らの口を重ねようとした。

「止めて・・・止めないと」

「止めないと・・何?凡人のお前に何が出来る?」

橙子の身体の操作権を手にし

勝ち誇った表情の和史は聞いた。

「ごめん・・・私も、もう凡人じゃないみたい」

橙子がそう言うと、和史の身体は、

恐竜の尻尾の様な物で弾き飛ばされ、

ホームランボールの様に、

空高く飛んでいってしまった。

「ごめん、

覚醒したのは貴方だけじゃなかったみたい」


地球にニアミスした巨大彗星は、

時間とともに、軌道を変え、

地球圏から離れていった。

そして、地球で覚醒したかに見えた人々も、

普通の凡人に戻っていった。


そんな地球規模の大異変に関わらず、

橙子が想いを寄せる、あの人は、

橙子じゃない、可愛い彼女とイチャついてるに違いない。


それを想うと橙子は、1人、泣いた。涙



おしまい
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

風が告げる未来

北川 聖
現代文学
風子は、父の日記を手にしたまま、長い時間それを眺めていた。彼女の心の中には、かつてないほどの混乱と問いが渦巻いていた。「全てが過ぎ去る」という父の言葉は、まるで風が自分自身の運命を予見していたかのように響いていた。 翌日、風子は学校を休み、父の足跡を辿る決意をした。日記の最後のページには、父が最後に訪れたとされる場所の名前が書かれていた。それは、彼女の住む街から遠く離れた、山奥の小さな村だった。風子は、その村へ行けば何か答えが見つかるかもしれないと信じていた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...