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6 まつよいの章

おとぎの国の旅行記 うさぎと亀

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昼下がりの授業中、

彼女の綺麗な手の上をくるくる回る、赤いペンを見ていて、催眠術に掛かった僕は、おとぎの国へ旅立った。

おとぎの国では、ちょうどうさぎと亀の競争が始まったばかりだった。
おとぎ話だと、うさぎが寝てしまい亀が勝つはずだ。
うさぎと亀の競争は、予想通りうさぎが最初からとばし、ゴールがある丘の向こうに消えた。

今頃、うさぎは亀の遅さに安心して、寝てしまう頃だ。
僕の頬がニヤニヤし始め、僕はうさぎを起こしたくなった。

僕は急いで丘の向こうに走っていくと、うさぎに
「起きろ!亀がもうすぐ来るぜ。」
と、言ってうさぎを起こした。

すぐに起きたうさぎは、後ろに迫る亀を見ると僕に
「ども。」
と、簡単に礼を言ってゴールに向かって走り出した。

レースは何のどんでん返しも無いまま終わった。

肩を落とした亀の後姿が、哀しかった。

僕はその姿を見て後悔した。

その時、
「バッシィーン」
と何かを叩きつける音がして、昼下がりの教室で熟睡していた僕は目覚めた。
目の前には英語の教師が
「おはよう。」
と嫌味たっぷりに言った。そして、
「放課後補習をするから残るように。」
と僕に言い渡した。

彼女の赤いペンは、すでに止まっていた。
彼女は小声で
「がんばって、亀君。」
と、僕がおとぎの国に行っていた事を知っているかの様な目で、僕に言った。

彼女はうさぎの様に眠る事無く、亀の様に鈍い僕を置いて、遊びに行ってしまった。

僕は、再びうさぎを起こしたことを後悔した。

おしまい
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