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5 なれそめの章
心を無くした男の話
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居酒屋で私の隣に座った男は、とても冷たい目をしていた。
その冷たさに、私の背中に寒気が走り、早く席を立ちたかったが、
男が聞きもしないのに、酒の勢いで1人語り始めた為、
席を立つ機を逃した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女が俺に
「優しい匂いがする。」
と、言ってくれたんだ。
彼女は俺の事を何も知らないし、あの悲劇も知らない。
あの悲劇の最中での、俺が見せた非情さも、冷酷さも、残酷さも、臆病さも、弱さも、薄情さも・・・何も知らない
俺には
『優しい匂い。』
がどんな匂いなのか解らないし、優しさがどんな物だったのかすら憶えていない。
でも、彼女がそう言ってくれるなら、
彼女の前だけでも、優しい男でいようと思った。
俺には優しい男がどんな事をするかよく解らないけど、
彼女が笑顔を見せれば、きっと上手く優しい男を演じていけるはずだ。
確信は無いけど・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昨晩、悲劇から生還したと言う男が、居酒屋で語った世間話だ。
結局、どんな悲劇だったのか、男は話してはくれなかった。
ただ、今でも男の冷たい目を思い出しただけで、寒気がした。
私にはあんな冷たい目の男に、優しさを感じる女がいる事が、とても不思議だった。
終
その冷たさに、私の背中に寒気が走り、早く席を立ちたかったが、
男が聞きもしないのに、酒の勢いで1人語り始めた為、
席を立つ機を逃した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女が俺に
「優しい匂いがする。」
と、言ってくれたんだ。
彼女は俺の事を何も知らないし、あの悲劇も知らない。
あの悲劇の最中での、俺が見せた非情さも、冷酷さも、残酷さも、臆病さも、弱さも、薄情さも・・・何も知らない
俺には
『優しい匂い。』
がどんな匂いなのか解らないし、優しさがどんな物だったのかすら憶えていない。
でも、彼女がそう言ってくれるなら、
彼女の前だけでも、優しい男でいようと思った。
俺には優しい男がどんな事をするかよく解らないけど、
彼女が笑顔を見せれば、きっと上手く優しい男を演じていけるはずだ。
確信は無いけど・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昨晩、悲劇から生還したと言う男が、居酒屋で語った世間話だ。
結局、どんな悲劇だったのか、男は話してはくれなかった。
ただ、今でも男の冷たい目を思い出しただけで、寒気がした。
私にはあんな冷たい目の男に、優しさを感じる女がいる事が、とても不思議だった。
終
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