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5 なれそめの章
恋の契約書
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僕は
「薄っすい関係!」
と、グランドピアノで、ショパンの『革命のエチュード』を狂ったように弾く彼女に言った。
僕と彼女との関係は、お互い1人だと孤独に耐えられないから、一緒にいるだけの関係。
もし、彼女が誰かに恋をしたら、
まるで、帰宅途中に友達と別れる時の様に、軽く
「バイバイ。」
と言って、僕らの関係に終止符を打つに違いない。
それは僕にしたって変わりは無い。
この関係性は、僕らが付き合う前に交わした契約書に、ご丁寧にもちゃんと書いてある。
契約書の冒頭はこんな感じだ。
『2人の関係は何事があっても、あとくされが無いように、ここに契約する。』
って、感じだ。
付き合い始めたときは、それでも良かった。
むしろ都合が良かった。
あの頃は、こんなに彼女の事をこんなに好きになるなんて、想像もしたことが無かった。
しかし、今の僕の心の中は四六時中、彼女の事でいっぱいだ。
もう、彼女なしでは生きられない。
にも関わらず、あの契約書のせいで、こんな薄っすい関係を続けさせられている。
呪わしい、恋の契約書だ。
僕は
「赤い糸どころか、白い糸、青い糸、どんな色の糸だって僕らを繋いではいない。
恋人同士が、こんな契約書で繋がってるなんて、まともじゃない。」
と苦情を言った。
すると彼女はピアノの鍵盤を叩く音を、ぴたりと止めると。
「あたしはこの関係嫌いじゃないし、それにすごく居心地がいい。
もし、契約に異議があるなら違約金10億払うか、私と別れるか、好きな方選んだら。
別れるのはただだし、何だったら、少しくらいなら慰謝料ぐらい払ってもいいよ。
引越し代ぐらいなら出せるから。」
と言って、再びピアノでショパンの『革命のエチュード』を狂ったように弾き始めた。
僕は
「何が革命だ!」
と言ったが、その声はピアノの音にかき消された。
彼女の表情は、すでに陶酔していた。
僕にではなくショパンにだ。
おしまい
「薄っすい関係!」
と、グランドピアノで、ショパンの『革命のエチュード』を狂ったように弾く彼女に言った。
僕と彼女との関係は、お互い1人だと孤独に耐えられないから、一緒にいるだけの関係。
もし、彼女が誰かに恋をしたら、
まるで、帰宅途中に友達と別れる時の様に、軽く
「バイバイ。」
と言って、僕らの関係に終止符を打つに違いない。
それは僕にしたって変わりは無い。
この関係性は、僕らが付き合う前に交わした契約書に、ご丁寧にもちゃんと書いてある。
契約書の冒頭はこんな感じだ。
『2人の関係は何事があっても、あとくされが無いように、ここに契約する。』
って、感じだ。
付き合い始めたときは、それでも良かった。
むしろ都合が良かった。
あの頃は、こんなに彼女の事をこんなに好きになるなんて、想像もしたことが無かった。
しかし、今の僕の心の中は四六時中、彼女の事でいっぱいだ。
もう、彼女なしでは生きられない。
にも関わらず、あの契約書のせいで、こんな薄っすい関係を続けさせられている。
呪わしい、恋の契約書だ。
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「赤い糸どころか、白い糸、青い糸、どんな色の糸だって僕らを繋いではいない。
恋人同士が、こんな契約書で繋がってるなんて、まともじゃない。」
と苦情を言った。
すると彼女はピアノの鍵盤を叩く音を、ぴたりと止めると。
「あたしはこの関係嫌いじゃないし、それにすごく居心地がいい。
もし、契約に異議があるなら違約金10億払うか、私と別れるか、好きな方選んだら。
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引越し代ぐらいなら出せるから。」
と言って、再びピアノでショパンの『革命のエチュード』を狂ったように弾き始めた。
僕は
「何が革命だ!」
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彼女の表情は、すでに陶酔していた。
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おしまい
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