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4 まっしぐらの章
千佳の変 前編
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最初に異変に気づいたのは、登校途中の駅の自動改札機だった。
千佳いつもの様に定期券を入れると、自動改札機の出口が閉まり、駅員が駆けつけてきた。
駅員は
「どうしました?」
と聞いた。千佳は
「定期はちゃんと入れましたけど」
と言った。駅員は不信な表情で、定期が期限を切れてないか確認した。駅員は
「期限は切れてませんね。」
と言いながら自動改札口の出口を開けた。千佳が「急いでるんです。」と言う表情で駅員を見ると駅員は定期を千佳に返して
「すいませんでした。機械の故障かな?」
と愛想笑いをした。
学校の校門に入った時から、千佳自身も異変を感じつつあった。
下駄箱で会った親友のしーちゃんに声をかけた時、まるで初対面の様に「えっ?」と言う表情で愛想笑いを浮かべられた。
そして、下駄箱を見るといつもの千佳の場所に、川井と言う見覚えの無い名札が付けてあった。下駄箱を開けるとその川井さんの靴が入っていた。
千佳の脳裏に
「いじめ?」
と言う単語が浮かんだ。
幼稚園からの親友のしーちゃんが、いじめに加わるはずはない。
「絶対に!」と千佳は思った。
千佳は仕方なく来客用のスリッパを履いて、教室へ向かった。
千佳が教室に入ると、教室の視線が一斉に千佳に向かった。
みんなの表情は、初対面の人間に見せる下駄箱でしーちゃんが見せた、あの表情と同じだった。千佳は思わず
「えっ何?みんな、どうしたの?」
と言いながら、自分の席へ向かった。
千佳の席では、あまり話したことも無い男子の葛城が、落ち着いた様子で電子辞書をいじっていた。
千佳が自分の机に鞄を置くと、葛城は「誰?」と言う目で千佳を見た。千佳は
「どいてよ。」
と言った。葛城は不思議そうな顔しながら、椅子から立ち上がった。
その時、教師が入って来て、千佳と葛城以外の生徒達は一斉に席に座った。教師は千佳を見るなり
「転校生?」
と聞いた。千佳は
「先生まで!」
と言って教壇に走った。そして
「どう言う事ですか?」
と聞いた。
教師は訳も解らず、慌てて教壇に置かれた名簿を確認した。
千佳もその名簿を見て
「ここにちゃんとあるでしょう。私の名前が・・・」と言おうとしが、名簿には千佳の名前は無かった。見慣れてるはずの千佳の担任教師は
「とりあえず学生課に行って、そこに事務員の人がいるから、そこで一回確認してから、来てもらえる?。学生課は一階の売店の隣にあるから。」
と他人行儀に言った。
千佳が振り向くと、親友しーちゃんも含めた、教室中の不思議なものを見るような視線が千佳に集まっていた。
千佳はその視線にいじめとは違う、異変を感じた。
千佳はその視線に耐え切れず、教室を飛び出した。
「とりあえず学生課に行こう。」
と千佳は呟いた。
学生課の名簿にも千佳の名前は無かった。千佳の入学記録すらなかった。
千佳は、今まで築いた人との繋がりや社会との繋がりが、突然絶たれた気がした。
見慣れた学校から突然、部外者扱いされた千佳は、この場所に居たたまれなくなった。
「家に帰ろう。」
と1人呟いた。
駅の自動改札機で2度も止められながら、やっと家に辿り着いた。
自分の家に着いて千佳は愕然とした。自分の家が在るはずの場所に、違う家が建っている。
それも、築40年は経っている古い家。川井と書かれた古い表札が玄関に掛けられていた。
千佳は思わず、持っていた鞄を落とした。
玄関の横の犬小屋の前で、見たことも無いドーベルマンが静かに千佳を威嚇していた。
千佳は
「そうだ、携帯。母さんに。」
と言って携帯を取り出して、母に電話を掛けた。
しかし、携帯は何の反応の示さなかった。千佳は「携帯が繋がらない?。」思った。
千佳は電源を再度入れてみたが、やはり反応は何も示さなかった。
学校にも家にも行き場を無くした、千佳は街を彷徨った。
気がつくと、いつも通っている図書館の学習センターの自習室に、座っていた。
日が暮れると自習室は、学校帰りの高校生で混み出した。
そして、千佳の隣に座った生徒が、千佳に声をかけた。
「あの・・・。」
千佳が隣を見ると、葛城が座っていた。千佳は
「葛城・・・君。」
と言った。葛城は
「もしかしてあなたは、世界の時間軸からはぐれてしまったのでは?。」
と千佳に言った。
葛城の目は、面白い物を見つけた子供の様に輝いていた。
つづく
千佳いつもの様に定期券を入れると、自動改札機の出口が閉まり、駅員が駆けつけてきた。
駅員は
「どうしました?」
と聞いた。千佳は
「定期はちゃんと入れましたけど」
と言った。駅員は不信な表情で、定期が期限を切れてないか確認した。駅員は
「期限は切れてませんね。」
と言いながら自動改札口の出口を開けた。千佳が「急いでるんです。」と言う表情で駅員を見ると駅員は定期を千佳に返して
「すいませんでした。機械の故障かな?」
と愛想笑いをした。
学校の校門に入った時から、千佳自身も異変を感じつつあった。
下駄箱で会った親友のしーちゃんに声をかけた時、まるで初対面の様に「えっ?」と言う表情で愛想笑いを浮かべられた。
そして、下駄箱を見るといつもの千佳の場所に、川井と言う見覚えの無い名札が付けてあった。下駄箱を開けるとその川井さんの靴が入っていた。
千佳の脳裏に
「いじめ?」
と言う単語が浮かんだ。
幼稚園からの親友のしーちゃんが、いじめに加わるはずはない。
「絶対に!」と千佳は思った。
千佳は仕方なく来客用のスリッパを履いて、教室へ向かった。
千佳が教室に入ると、教室の視線が一斉に千佳に向かった。
みんなの表情は、初対面の人間に見せる下駄箱でしーちゃんが見せた、あの表情と同じだった。千佳は思わず
「えっ何?みんな、どうしたの?」
と言いながら、自分の席へ向かった。
千佳の席では、あまり話したことも無い男子の葛城が、落ち着いた様子で電子辞書をいじっていた。
千佳が自分の机に鞄を置くと、葛城は「誰?」と言う目で千佳を見た。千佳は
「どいてよ。」
と言った。葛城は不思議そうな顔しながら、椅子から立ち上がった。
その時、教師が入って来て、千佳と葛城以外の生徒達は一斉に席に座った。教師は千佳を見るなり
「転校生?」
と聞いた。千佳は
「先生まで!」
と言って教壇に走った。そして
「どう言う事ですか?」
と聞いた。
教師は訳も解らず、慌てて教壇に置かれた名簿を確認した。
千佳もその名簿を見て
「ここにちゃんとあるでしょう。私の名前が・・・」と言おうとしが、名簿には千佳の名前は無かった。見慣れてるはずの千佳の担任教師は
「とりあえず学生課に行って、そこに事務員の人がいるから、そこで一回確認してから、来てもらえる?。学生課は一階の売店の隣にあるから。」
と他人行儀に言った。
千佳が振り向くと、親友しーちゃんも含めた、教室中の不思議なものを見るような視線が千佳に集まっていた。
千佳はその視線にいじめとは違う、異変を感じた。
千佳はその視線に耐え切れず、教室を飛び出した。
「とりあえず学生課に行こう。」
と千佳は呟いた。
学生課の名簿にも千佳の名前は無かった。千佳の入学記録すらなかった。
千佳は、今まで築いた人との繋がりや社会との繋がりが、突然絶たれた気がした。
見慣れた学校から突然、部外者扱いされた千佳は、この場所に居たたまれなくなった。
「家に帰ろう。」
と1人呟いた。
駅の自動改札機で2度も止められながら、やっと家に辿り着いた。
自分の家に着いて千佳は愕然とした。自分の家が在るはずの場所に、違う家が建っている。
それも、築40年は経っている古い家。川井と書かれた古い表札が玄関に掛けられていた。
千佳は思わず、持っていた鞄を落とした。
玄関の横の犬小屋の前で、見たことも無いドーベルマンが静かに千佳を威嚇していた。
千佳は
「そうだ、携帯。母さんに。」
と言って携帯を取り出して、母に電話を掛けた。
しかし、携帯は何の反応の示さなかった。千佳は「携帯が繋がらない?。」思った。
千佳は電源を再度入れてみたが、やはり反応は何も示さなかった。
学校にも家にも行き場を無くした、千佳は街を彷徨った。
気がつくと、いつも通っている図書館の学習センターの自習室に、座っていた。
日が暮れると自習室は、学校帰りの高校生で混み出した。
そして、千佳の隣に座った生徒が、千佳に声をかけた。
「あの・・・。」
千佳が隣を見ると、葛城が座っていた。千佳は
「葛城・・・君。」
と言った。葛城は
「もしかしてあなたは、世界の時間軸からはぐれてしまったのでは?。」
と千佳に言った。
葛城の目は、面白い物を見つけた子供の様に輝いていた。
つづく
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