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3 かがりびの章
黄金の鍵 後編
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月の明かりも、星の輝きも無い暗闇の中を、僕は突き進んだ。
暗闇の静けさの中で僕の耳は、黄金の鍵が輝きを放つ時出す、わずかな音を聞き取った。
僕の冷静さは
「そんな音、気のせいかも知れない・・・」
と心の中でそう呟いた。
僕自身、確かな事は何も解らなかった。それでも、僕の体はそのわずか音の方へ歩みを進めた。
すると、目の前に街全体がオレンジ色の街灯に照らされた、今まで見た事も聞いた事も無い街が現れた。
「こんな街、在ったっけ?。」
と僕は呟いた。
オレンジ色に照らされた街は、真夜中にも関わらず、人々の喧騒に包まれていた。
オレンジ色の街の喧騒で、黄金の鍵が輝きを放つ時出すわずかな音は、聞き取れなくなった。
僕が街の人に聞くと
「祭りだよ・・・街をオレンジ色に照らす祭り。春分を祝う日。ようするに、春の到来を祝うのさ。」
と教えてくれた。
僕はオレンジ色に照らされた街で、鍵屋を見つけた。
鍵屋の看板に『鍵の事なら何でもご相談ください。』と書いてあった。
僕は「ちょっと見当違いかも。」と思ったが、とりあえず鍵屋に入ってみた。
鍵屋に入ると
「いらっしゃい。」
と言って、愛想の良い鍵職人が出てきた。
僕は鍵職人に『彼女の心を開ける黄金の鍵』を探してる事を告げた。
鍵職人は難しそうな表情をしながら、僕に詳しい事情を聞いた。
僕がある程度事情を話すと、鍵職人は
「君の彼女が自ら、黄金の鍵を闇に放り投げたんだね。」
と言った。僕は
「はい。」
と答えた。
鍵職人はじっと僕の目を見て、真偽を確認した。
そして、納得した様に
「解った。」
と言って、店の奥からまるで宝石箱の様な箱を持ってきて、古い机の上に置いた。
鍵職人は
「君がこうやって来た以上、私にこの鍵を持ち続ける権利はない。」
と言った。僕は
「はい。」
と丁寧に言った。鍵職人は
「しかし、何かの縁が在った者の意見として聞いてほしい。」
と言った。僕は
「はい。」
と丁寧に言った。鍵職人は
「長い事、鍵屋をしていると似たような事に何度か、遭遇したことがある。私は彼女の行為は正しかったと思う。君は若い・・・いや幼い。」
と言った。
鍵職人の「幼い。」と言う言葉に、僕は心の奥に苛つきを感じた。
鍵職人は
「君は、彼女が心の奥に持つ業の重さに耐え切れないし、彼女の業そのものを許すことは出来 ない。その業の為に、彼女を嫌い、挙句は罵るかも知れない。彼女にとってそれは、死ぬこ とより辛いかも知れない。」
と言った。僕は
「ごう?。」
と聞いた。鍵職人は
「運命の様な物だ。君が彼女の運命を支えるには、まだ若すぎるし幼すぎる。10年・・・せめて5年は待ったほうがいい。5年・・・5年の年月があれば、君は彼女のすべてを受け止められる強さを身に付けられるはずだ。」
と言った。僕は
「はい。」
と言って頷くと、鍵職人は僕の前に宝石箱を置いて、丁寧に蓋を開けた。
宝石箱の中には光り輝く黄金の鍵が入っていた。
僕はその眩しさに心が躍った。鍵職人は
「これだね。」
と言って僕に確認を取った。僕は
「そうです。」
と丁寧に言った。
鍵職人が静かに宝石箱の蓋を閉めると、黄金の鍵が入った宝石箱を丁寧に包装してくれた。
「いいね。今日、持ち帰っても彼女には『見つからなかった』と言うんだよ。そして、5年後、君が強さを身に着けるまで待つんだ。いいね。」
と僕に再度、確認を取った。僕は丁寧に
「はい、解りました。」
と答えた。
僕は鍵職人に深い礼を言うと、オレンジ色の街灯に照らされた街を、走りぬけ彼女の元へ急いだ。
月の明かりも、星の輝きも無い暗闇の中を、僕は走った。
暗闇の静けさの中で僕の耳は、今は手元にある黄金の鍵が輝きを放つ時出すわずかな音を、聞き取った。
僕は暗闇を突き進みながら、鍵屋との会話を思い出していた。
「何が幼いだ!僕の事を何も知らないくせに・・・僕が彼女の業を許すことが出来ないだって!何が業だ!彼女に会った事もないくせに何がわかる。」
と僕は暗闇の中で叫んだ。
僕は急いで彼女の待つ、彼女の部屋に飛び込んだ。彼女は寝る事無く、待っていてくれた。
彼女は
「黄金の鍵は見つかった?。」
と僕に聞いた。僕は包装された宝石箱をテーブルに置いて、包装紙を急いで破り捨てた。そして
「みて。」
と言って宝石箱を開けた。黄金の鍵の輝きが部屋中に満ちた。
そして、僕が彼女を見ると、彼女の表情は深い悲しみに満ちていた。
その表情を見た僕の心は、彼女の深い悲しみに共鳴した後、今まで感じた事が無い類の畏れを感じた。
その場に居たたまれなくなった僕は、光り輝く黄金の鍵を握り締め、再び深い闇の中に放り込んだ。
そして、僕は訳も解らず、その場に座り込んでしまった。
1時間・・・もっと経ったかも知れない時間の後、彼女が後ろから僕を抱きしめた。彼女の優しい体温が僕の背中に伝わった。
彼女が隠し持っていた銀色に輝くナイフを、棚の奥にそっとしまった事を、まだ若い彼が知る余地は無かった。
おしまい
暗闇の静けさの中で僕の耳は、黄金の鍵が輝きを放つ時出す、わずかな音を聞き取った。
僕の冷静さは
「そんな音、気のせいかも知れない・・・」
と心の中でそう呟いた。
僕自身、確かな事は何も解らなかった。それでも、僕の体はそのわずか音の方へ歩みを進めた。
すると、目の前に街全体がオレンジ色の街灯に照らされた、今まで見た事も聞いた事も無い街が現れた。
「こんな街、在ったっけ?。」
と僕は呟いた。
オレンジ色に照らされた街は、真夜中にも関わらず、人々の喧騒に包まれていた。
オレンジ色の街の喧騒で、黄金の鍵が輝きを放つ時出すわずかな音は、聞き取れなくなった。
僕が街の人に聞くと
「祭りだよ・・・街をオレンジ色に照らす祭り。春分を祝う日。ようするに、春の到来を祝うのさ。」
と教えてくれた。
僕はオレンジ色に照らされた街で、鍵屋を見つけた。
鍵屋の看板に『鍵の事なら何でもご相談ください。』と書いてあった。
僕は「ちょっと見当違いかも。」と思ったが、とりあえず鍵屋に入ってみた。
鍵屋に入ると
「いらっしゃい。」
と言って、愛想の良い鍵職人が出てきた。
僕は鍵職人に『彼女の心を開ける黄金の鍵』を探してる事を告げた。
鍵職人は難しそうな表情をしながら、僕に詳しい事情を聞いた。
僕がある程度事情を話すと、鍵職人は
「君の彼女が自ら、黄金の鍵を闇に放り投げたんだね。」
と言った。僕は
「はい。」
と答えた。
鍵職人はじっと僕の目を見て、真偽を確認した。
そして、納得した様に
「解った。」
と言って、店の奥からまるで宝石箱の様な箱を持ってきて、古い机の上に置いた。
鍵職人は
「君がこうやって来た以上、私にこの鍵を持ち続ける権利はない。」
と言った。僕は
「はい。」
と丁寧に言った。鍵職人は
「しかし、何かの縁が在った者の意見として聞いてほしい。」
と言った。僕は
「はい。」
と丁寧に言った。鍵職人は
「長い事、鍵屋をしていると似たような事に何度か、遭遇したことがある。私は彼女の行為は正しかったと思う。君は若い・・・いや幼い。」
と言った。
鍵職人の「幼い。」と言う言葉に、僕は心の奥に苛つきを感じた。
鍵職人は
「君は、彼女が心の奥に持つ業の重さに耐え切れないし、彼女の業そのものを許すことは出来 ない。その業の為に、彼女を嫌い、挙句は罵るかも知れない。彼女にとってそれは、死ぬこ とより辛いかも知れない。」
と言った。僕は
「ごう?。」
と聞いた。鍵職人は
「運命の様な物だ。君が彼女の運命を支えるには、まだ若すぎるし幼すぎる。10年・・・せめて5年は待ったほうがいい。5年・・・5年の年月があれば、君は彼女のすべてを受け止められる強さを身に付けられるはずだ。」
と言った。僕は
「はい。」
と言って頷くと、鍵職人は僕の前に宝石箱を置いて、丁寧に蓋を開けた。
宝石箱の中には光り輝く黄金の鍵が入っていた。
僕はその眩しさに心が躍った。鍵職人は
「これだね。」
と言って僕に確認を取った。僕は
「そうです。」
と丁寧に言った。
鍵職人が静かに宝石箱の蓋を閉めると、黄金の鍵が入った宝石箱を丁寧に包装してくれた。
「いいね。今日、持ち帰っても彼女には『見つからなかった』と言うんだよ。そして、5年後、君が強さを身に着けるまで待つんだ。いいね。」
と僕に再度、確認を取った。僕は丁寧に
「はい、解りました。」
と答えた。
僕は鍵職人に深い礼を言うと、オレンジ色の街灯に照らされた街を、走りぬけ彼女の元へ急いだ。
月の明かりも、星の輝きも無い暗闇の中を、僕は走った。
暗闇の静けさの中で僕の耳は、今は手元にある黄金の鍵が輝きを放つ時出すわずかな音を、聞き取った。
僕は暗闇を突き進みながら、鍵屋との会話を思い出していた。
「何が幼いだ!僕の事を何も知らないくせに・・・僕が彼女の業を許すことが出来ないだって!何が業だ!彼女に会った事もないくせに何がわかる。」
と僕は暗闇の中で叫んだ。
僕は急いで彼女の待つ、彼女の部屋に飛び込んだ。彼女は寝る事無く、待っていてくれた。
彼女は
「黄金の鍵は見つかった?。」
と僕に聞いた。僕は包装された宝石箱をテーブルに置いて、包装紙を急いで破り捨てた。そして
「みて。」
と言って宝石箱を開けた。黄金の鍵の輝きが部屋中に満ちた。
そして、僕が彼女を見ると、彼女の表情は深い悲しみに満ちていた。
その表情を見た僕の心は、彼女の深い悲しみに共鳴した後、今まで感じた事が無い類の畏れを感じた。
その場に居たたまれなくなった僕は、光り輝く黄金の鍵を握り締め、再び深い闇の中に放り込んだ。
そして、僕は訳も解らず、その場に座り込んでしまった。
1時間・・・もっと経ったかも知れない時間の後、彼女が後ろから僕を抱きしめた。彼女の優しい体温が僕の背中に伝わった。
彼女が隠し持っていた銀色に輝くナイフを、棚の奥にそっとしまった事を、まだ若い彼が知る余地は無かった。
おしまい
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