MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達

健野屋文乃(たけのやふみの)

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2 たそがれの章

風が吹くと爺ちゃん喜ぶ

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                私が小学3年生の時に、

                 授業で描いた絵が、

              小学校内で毎年開かれている、

              絵のコンクールで金賞を獲った。


                自分で描いた物だが、

                どう贔屓目に見ても、

            上手いとは言いがたい作品だった。


          どちらかと言うと下手な絵に部類している事は、

        小学3年生で絵の才能の欠片もない私にも分かった。


                 受賞理由を聞くと、

           絵の中のポプラの木が風にそよいでいて、

           「小学3年生で風を表現した事は卓越してる」

                  と言う理由らしい。

 
              絵を見ると確かにポプラの木が、

          風にそよいでいるように見えなくもなかった。


            私は「ただ風が吹いていただけじゃん」と、

           その程度の受賞理由で金賞を獲った事が、

                あまり気に入らなかった。

             とは言え、入院していた爺ちゃんは、

          何かと出来の悪い孫の快挙に大喜びしてくれた。


                 看護婦さんの話によると、

              お見舞いに来た私たちが帰った後も、

                 ずっと眺めていたらしい。



                       
                      風が吹く  

                        ↓                    

                    ポプラの木がそよぐ

                        ↓           

            それを見ていた出来の悪い孫がそのまま描く

                        ↓

            絵の審査員が「小学3年生にしては凄い」と思う

                        ↓

                 出来の悪い孫金賞を貰う   

                        ↓                     

                    爺ちゃん喜ぶ
                           
       

                  「気のいい風の神様が、

           気まぐれで吹かしてくれた風なのかもしれない」                     

                    と、ふと思った。

                       おしまい
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