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2 たそがれの章

笑顔の装置

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「マフラー編んであげようか?」 
と、小学6年の時、転校した小学校で初めて迎えた冬に、

同じクラスの女子に言われた。

僕は
「いらない。」
と冷たく返答した。

この小学校に転校する前、僕は殺風景な小学校で数年間を過ごした。

殺風景な小学校で過ごす内に、

嬉しさを探知する装置と嬉しさを表現する装置を、

自分の心から取り外した。

それがその殺風景な小学校での、

無感想な時間をやり過ごすための最善の方法に思えた。

嬉しさを探知する装置と、嬉しさを表現する装置を、

心から取り外した僕には、「いらない。」

と冷たく返答する以外に手段は無かった。

それから数ヵ月後、

僕は嬉しさを探知する装置と嬉しさを表現する装置を、

見つけ出した。

嬉しさを探知する装置のメーターの針は、振り切れていた。

装置の探知能力を遥かに超える嬉しさを探知していたのだ。

そして、嬉しさを表現する装置は、

手編みのマフラーの暖かさと笑顔を僕にもたらした。

おしまい
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