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第十六篇第三章 天下分け目の大戦・弐
海中の探知者
しおりを挟む「はうっ……よくシャボン玉がこうなるってわかったねぇ?ルナちゃんてば……すごいなあ……」
「エルム少将……イルカとはクールな生物なのさ」
イルカをモデルとしたルナの覚醒。
其の固有特性は“探知”。
イルカは人とは全く異なった周波数で周囲の
音を感じ取る事が出来る生物。
だからこそ、罠の位置、敵の位置。
其れを普段とは優れた感知能力に依り感じる
事が出来るというのがルナの覚醒の強み。
此れを用いて、エルムの“奇術”という特性の
カラクリを把握したというのが種だ。
此れに依り、エルムは通常の戦い方が完全に
封じられた事を悟ってしまう。
「じゃあいつもみたいにステージでキラキラしながら踊ってる…みたいなのはダメってことかあ。んー……エルムちゃん困っちゃったなあ」
「余り引き出しが少ない様には見えないぞ。エルム少将」
「んー?どうして、どうして?」
「余裕綽々にしか見えぬという事だ」
中距離・遠距離タイプである筈のルナが前へ
珍しくと言っても良い程に出た。
足元からエルムに向けて張られた紫苑色の氷
の上を滑る様にして加速したルナはライフル
ではなく腕のフィンでエルムを狙う。
しかし、ヒラリと躱したエルムはルナの背後
を取る様にステップを踏む。
其れに合わせて急ターンを仕掛けたルナの足
が突如として何かに取られてしまう。
「しまった……」
「スキありっ!!」
紫苑色の氷の上を滑っていたつもりのルナの
足元は突如として蒲公英色の雪に覆われた。
其の雪に足を滑らせて体勢を崩したルナの肩
付近にエルムのステッキが直撃する。
そして、背中から倒れたルナに対しエルムは
蒲公英色の雪の雪崩を起こしルナの身体ごと
雪の中に閉じ込めてしまった。
ルナの肩や膝、お腹の上に纏わり付くかの様
に被さった雪は勿論、ギフトの特性。
“淡雪”の効力で、ルナの動きが減速を起こし
思った様に動かなくなってしまった。
「はいっ……エルムちゃんの勝ちでいーよねっ……いつでもトドメさせちゃうんだからさっ……」
膝を折ってルナの顔を覗き込むエルム。
しかし、ルナは諦めるという選択肢等、最初
から持ってはいなかった。
勢い良く流した波動のチカラでエルムの特性
をも打ち払いライフルをエルムの額に当てて
形勢は五分だとアピールする。
「これでもいつでも止めを刺せる等と世迷言が言えるか?エルム少将」
「ふう……なら撃っていいよ?でもお互いにそれをしなかった……エルムちゃんも。今のルナちゃんもそう」
エルムはステッキでライフルを弾き背後へと
バックステップで間合いを取った。
其れを見て緩りとルナも立ち上がる。
「エルムちゃんたちさ…向いてないよ、こんなの……」
「何だと…?」
「命の奪い合いなんて向いてないって言ったの」
エルムの言葉にルナは黙り込む。
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