RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱

覚悟を果たす最後の儀

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しかし、其の覚悟を果たすには、まだ後一つ
やるべき事が残っていた。



「絶技……」



膝を着くポアラの眼前でエマは自身最高峰の
波動とギフトのオーラを纏って行く。



「超えてみんしゃい……ポアラっ…」



其の言葉は小さく呟かれポアラの耳には届く
事は無く青柳色のオーラが最高値を示す。



 雷轟蜂起・蜂巣らいごうほうき・はちのすッッ!!!!」



青柳色の稲妻を纏った蜂達がまるで蜂の巣を
突いた様に一斉に飛び回り始める。

網を張る様に飛び回る蜂から発せられた波動
にポアラの身体は更なる麻痺を起こす。

体内は固有特性、体の表面はエマの放つ蜂の
波動に依って痺れ行く身体に波動を流す事が
とても難しい状況に陥る。

そして、エマが地面を蹴る。

ポアラの心臓を目指して槍の一撃を叩き込む
様に加速して行った。



「………勝たなきゃ。ロードには絶対に家族と再会してもらうんだからッ!!!!」



全身にポアラの波動が流れ込む。

そして、足が動くのを確認したポアラは一気
に地面を蹴ってエマとの間合いを詰める。



「絶技… 精霊柔術・翠玉拳せいれいじゅうじゅつ・すいぎょくけんッッ!!!!」



迫り来るエマの足下に重力の魔法陣が描かれ
エマの速度が格段に落ちて行く。

そして、ポアラは翠色のオーラを拳に集めて
エマに向けて其の拳を叩き込んだ。




しかし、其の直前にエマは笑みを浮かべた。

そして、槍を下ろしポアラの一撃を抱え込む
様に受け止めたのだった。



「……えっ?な、なんで……どうしてッ!?エマッ!!」



絶技の直撃を受けたエマはガクッと身体から
力を失い其の場に倒れ行く。

慌てて身体を抱えたポアラの手の中でエマは
未だに清々しい笑みを浮かべたままだ。



「あん時、決めたっちゃん。もしポアラたちとやることになったなら……道ば譲ろうって……ばってん、うちに勝てんぐらいなら下がらしぇなきゃ死んでしまうけん…ごめんね。痛かったっちゃんね……」


「まってまってっ……なんにもわかんない。なんでっ!?負けられないんでしょ?エマたちだってっ!」



理解が及ばず、ポアラは錯乱する。

そんなポアラの頬に力無きエマの手のひらが
そっと当てられ声を掛けられた。



「ポアラ…うちらば“人間”として見てくれてありがとう……ほんなこつ嬉しかったっちゃん…そん言葉がしゃ」


「………エマぁ…」


「うちならまだ死にやしぇんけん。安心して……早よ前へと進まな!」



ポアラは瞳から流れ出る雫を止められない。

其の雫を代わりにエマの指先が優しく拭って
くれていたが、其れでは足りない量が流れて
止まらなくなってしまった。

しかし、エマの言う通りだ。

前へと進まなきゃいけない。



「………行ってくるっ!」



最後には笑みを見せたポアラ。

そして、駆け出して行くポアラの背をエマは
ホッとした表情で見送るのだった。



帝国軍本部、左翼の戦い。

同盟軍ポアラvs政府軍エマ。

勝者ポアラ・セルヴァンテス。

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