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第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱
メディックス家の呪縛
しおりを挟むあの日、エマは思い出した。
いや、思い出したというよりも強制的に想起
されたに近いというのが正しいか。
彼女の生まれたメディックス家は、各世代で
裏帝軍幹部の称号を継いできた一族。
彼女は、四人兄弟の次女である。
当時、幹部の名を冠したエマの父や家族絡み
の有権者達に依り四人兄弟は幼少期から過度
なスパルタの中で生きて来た。
メディックス家には、弱者は要らない。
まるで、モノと同列に育てられた戦闘兵器と
変わらぬ扱いの人形でしか無かった。
其の過度な育成プログラムの中で再起不能の
怪我を負う兄弟も居たらしい。
だが、エマの父は自身の子に対し愛情という
感情を持ち合わせておらず、壊れたならまた
作ればいい、そんな最悪の意志を持つ。
エマは、そんな呪縛の中で生きて来た。
運も良かったと言えるだろう。
エマは裏帝軍所属に迄は辿り着くも裏帝軍に
於いても人を道具扱いとするのは変わらない
日常であり心の底から笑った事等、記憶には
無い程に暗い道を歩いて来た。
だからこそ、グレイの起こした大事件。
血の氾濫の中でエマの実父が凄惨な死を迎え
息絶えた事にも苦心の感情は無かった。
いや、感謝の念しか生まれなかったのだ。
彼女の暗い道に一筋の光を射し込ませる事と
なったグレイへの忠誠心は本物である。
だからこそ、任務での失敗は其のグレイをも
最悪の立場へと戻らせる事を知っている。
其の暗雲の中で、悲しい表情を浮かべあの日
祈りの街メイデンセイスの光の泉へと彼女は
現れた事は紛れも無い事実。
結果は、失敗に終わった。
だが、何故だか心は救われた気がした。
其の理由はただ一つ。
相見えたロードやポアラの言葉だった。
『それはなにッ!?アンタたちの上がそういう態度だって言うのッ!?人の命ってそんなに軽いモンじゃないでしょッ!?』
『テメェが生き抜いてきた、これまでの全てを……否定する気なんざねぇし、そんな資格は俺にはねぇ…ッ…!だがな……誰も助けちゃくれねぇなんて…死んでも言うんじゃねェよッッ!!』
まるで、心臓に刃物を突き立てられたかの様
な感情にエマは苛まれた。
当たり前過ぎて、忘れていたからだ。
仲間が居る、命は重たいモノ。
心の何処かで其れを否定しても現実が被さり
続けて来た事で当たり前を忘れていた。
しかし何故、そんな感情に苛まれたかの答え
は其の言葉を、“敵”から言われたからだ。
本来、味方である筈の政府からは道具扱いを
されて来た裏帝軍の面々が、まさかの敵から
其の当たり前を教えられた。
感情がぐちゃぐちゃになった。
誰が“敵”で誰が“味方”なのか解らなくなった
のはエマだけでは無かった筈だ。
だからもし、此の戦争でポアラや其の仲間と
武を競う事となった場合に備え、エマは一つ
の覚悟を持って此処に来ていたのだ。
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