RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
714 / 729
第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱

憧れとは道を鎖す物也

しおりを挟む





「あっしだってねぇ……アンタ達みたいに…誰かの為に戦える人間に憧れたさあ……」



震える声で絞り出した其の言葉こそがオーズ
という人間の本心であった。

しかし、其の憧れが彼を苦しめていた。



「でもねェ……あっしは知っちまったのさ…憧れって感情が枷にしかならない事をねぇ」



憧れとは、枷。

其れは真理なのかもしれない。

彼の様に成りたい、あの人の様に在りたい。

目標を定めるには最適なのかもしれない其の
言葉に潜んだ悲しき現実。



“憧れる事は超えられない現実を知る事也”



自身には無いものをねだり、羨ましげに自身
を卑下する事に繋がれば人間は成長を止める
事を彼は経験則で知ってしまった。

だからこそ、心の奥底に其の想いを鎖し布を
被せてひょうきんな自身を偽って来た。

しかし、眼前で起きたガルダやヴィスタの姿
が本来のオーズの想いを蘇らせた。



「それだけの想いがあるのになんでエスケープを続けるんだッ!!ウィークポイントの無い人間なんて居ないだろう!」


「アンタらみたいな人間にゃあ……解ってもらえない事なんて重々、承知だよお……」


「自分自身の可能性からエスケープするなんて……ノークールさッ!!」



ヴィスタが錫杖を構える。

そして、其の錫杖に纏われた旋風の様な一撃
が錫杖の一振りから放たれる。



「絶技…… 速旋・刈螺鼬そくせん・からいたちッッ!!!!」



其の一振りから放たれた一撃が巻き上がった
梔子色の葉に因って形を変えて行く。

そして、其の一撃が鼬の身体を模るとオーズ
目掛けて一閃の様に駆け抜けた。



「あっしの逃げの人生も此処迄かねぇ…」



オーズが、突如として足を止めた。

受け止めるかの様にヴィスタの絶技に呑まれ
そのままオーズは背中から倒れ込んで行く。



「ワッツ……何故、避けようともしなかったんだい…?」


「あっしにゃあ…アンタ達が……ああ…眩しくてねぇ……もう戦う気力が削がれちまったよぉ………うぃ~」



オーズから覚醒が解けて行く。

此れは、ヴィスタの勝利を示すモノだった。



「トドメ、一思いにさしちゃあくれんかねぇ?」


「ノーセンクス。バトルのリーズンを失っているユーを…ミーがどうこう出来るハズもないだろう」


「……また、死に損なうのかい?あっしは」


「ユーを政府軍のお仲間さんに引き渡す。死に損なったとシンクするなら……そのライフで何が出来るか、ワンモア考えて欲しい。ライフは一個しか無いんだ……大切にしなよ。ハングオーバーメン……」



ヴィスタは、駆け寄って来る政府軍の戦力を
確認すると、其の場に背を向けた。

オーズが生き残れる為の人事は尽くした。



「ヒック……まだこんなあっしも…変われるってのかねぇ……ああ…そうかい。全部、自分自身って事、なんだよねぇ……」



帝国軍本部、左翼の戦い。

同盟軍ヴィスタvs政府軍オーズ。

勝者、ヴィスタ・リスボーン。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...