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第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱
憧れとは道を鎖す物也
しおりを挟む「あっしだってねぇ……アンタ達みたいに…誰かの為に戦える人間に憧れたさあ……」
震える声で絞り出した其の言葉こそがオーズ
という人間の本心であった。
しかし、其の憧れが彼を苦しめていた。
「でもねェ……あっしは知っちまったのさ…憧れって感情が枷にしかならない事をねぇ」
憧れとは、枷。
其れは真理なのかもしれない。
彼の様に成りたい、あの人の様に在りたい。
目標を定めるには最適なのかもしれない其の
言葉に潜んだ悲しき現実。
“憧れる事は超えられない現実を知る事也”
自身には無いものをねだり、羨ましげに自身
を卑下する事に繋がれば人間は成長を止める
事を彼は経験則で知ってしまった。
だからこそ、心の奥底に其の想いを鎖し布を
被せてひょうきんな自身を偽って来た。
しかし、眼前で起きたガルダやヴィスタの姿
が本来のオーズの想いを蘇らせた。
「それだけの想いがあるのになんでエスケープを続けるんだッ!!ウィークポイントの無い人間なんて居ないだろう!」
「アンタらみたいな人間にゃあ……解ってもらえない事なんて重々、承知だよお……」
「自分自身の可能性からエスケープするなんて……ノークールさッ!!」
ヴィスタが錫杖を構える。
そして、其の錫杖に纏われた旋風の様な一撃
が錫杖の一振りから放たれる。
「絶技…… 速旋・刈螺鼬ッッ!!!!」
其の一振りから放たれた一撃が巻き上がった
梔子色の葉に因って形を変えて行く。
そして、其の一撃が鼬の身体を模るとオーズ
目掛けて一閃の様に駆け抜けた。
「あっしの逃げの人生も此処迄かねぇ…」
オーズが、突如として足を止めた。
受け止めるかの様にヴィスタの絶技に呑まれ
そのままオーズは背中から倒れ込んで行く。
「ワッツ……何故、避けようともしなかったんだい…?」
「あっしにゃあ…アンタ達が……ああ…眩しくてねぇ……もう戦う気力が削がれちまったよぉ………うぃ~」
オーズから覚醒が解けて行く。
此れは、ヴィスタの勝利を示すモノだった。
「トドメ、一思いにさしちゃあくれんかねぇ?」
「ノーセンクス。バトルのリーズンを失っているユーを…ミーがどうこう出来るハズもないだろう」
「……また、死に損なうのかい?あっしは」
「ユーを政府軍のお仲間さんに引き渡す。死に損なったとシンクするなら……そのライフで何が出来るか、ワンモア考えて欲しい。ライフは一個しか無いんだ……大切にしなよ。ハングオーバーメン……」
ヴィスタは、駆け寄って来る政府軍の戦力を
確認すると、其の場に背を向けた。
オーズが生き残れる為の人事は尽くした。
「ヒック……まだこんなあっしも…変われるってのかねぇ……ああ…そうかい。全部、自分自身って事、なんだよねぇ……」
帝国軍本部、左翼の戦い。
同盟軍ヴィスタvs政府軍オーズ。
勝者、ヴィスタ・リスボーン。
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