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第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱
旋鼬ヴィスタvs酒呑オーズ
しおりを挟む連戦となったオーズは既にチカラの底を見せ
尽くしてしまっていた。
足元に転がされた瓢箪には酒は無く固有特性
“心酔”のチカラも上限値を迎えている。
既に多くの血を流したオーズに対し未だ全力
を出すだけの余力を残していたヴィスタから
優位に戦いが動く事は想定内であった。
ヴィスタの樹木のギフトの得意特性“増殖”の
チカラに因って増え続ける梔子色の葉の刃。
そして、其れに追随する様に発せられた彼の
固有特性が更なる牙を剥く。
ヴィスタの覚醒の固有特性は“鎌鼬”。
其の名の通りに全ての攻撃に更なる斬撃特性
を付与する固有特性で有り錫杖に因って宙を
彷徨う様に飛ばされた梔子色の葉の刃が更に
研ぎ澄まされた切れ味を誇ってオーズへ向け
襲い掛かって来る。
「ヒック……ああ…絶技、覚醒の反動…彼に受けた傷諸々が……あっしをジワジワと追い込んでるよぉ……うぃ~…中々、厳しいねぇ」
梔子色の葉の刃に身体の至る所を切り刻まれ
噴き出す血の熱さを感じながらオーズの表情
は不思議と笑みに包まれていた。
「ワオ……なんでこのシチュエーションでスマイルが出来るんだい?まだまだ余裕が在る証拠なのかな」
「そんなモンないよお………。ただあっしもそろそろ…アイツらんトコに行く順番なのかなってことさあ……」
オーズは時折、天を眺めて口を開く。
其の姿にヴィスタは心の何処かでオーズから
何やら寂しげなモノを感じ取っていた。
「……あんなモン見せられちまったら…心が騒ついちまうよ…」
ボソッと吐いた其の言葉はヴィスタへ届く事
は無く、戦場の喧騒に掻き消された。
だが、オーズの眼には未だ背後の仲間達の事
を救おうと身体を張ったガルダの姿が映され
消えてはいなかった。
「(こんな世だ……仲間の為に身体を張れる勇気があったヤツはァ……みんな早死にだったよォ……あっしみたいに逃げ足が早くて臆病なモンだけが生き残る……なんて不平等な世の中なんだろうねェ……)」
オーズは既に他界した同期の仲間達をガルダ
や今眼前に立ちはだかるヴィスタに重ねる。
そして、嘆いてしまっていた。
其の優しさや勇気が、彼等の寿命を短いモノ
としてしまうであろう事を。
オーズは、時代を憎み続ける者の一人。
しかし、声を大には出来なかった。
其れが当たり前だと思っていたのだ。
臆病者の自分には時代を変えるなんて豪語を
する事がどれ程滑稽な事なのかを彼自身の心
に深く刻まれてしまっているから。
しかし、其れの何が悪であろうか。
多くの人間は、心を声へと変えられない。
だから愚痴が溜まる、だから言い訳が出る。
戦う者、抗う者も居るであろう。
しかし、其れだけの勇気を持つ者は少ない。
オーズの様な人間が大半なのである。
だが、彼は久方振りに自身の心に深く鎖した
扉が開く音を聞いてしまった。
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