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第十六篇第二章 天下分け目の大戦・壱
振り絞る意地
しおりを挟む「(ダメだ、こりゃ……身体が動かねぇよ…受け身も取れないし。あーあ…いてぇだろうなあ、地面に衝突したら……)」
異常なる痛みにアレンはどこか諦めムードで
受け身を取る事も無く地面に衝突した。
そして、薄れ行く意識の中で空を仰いだ其の
視線の先は人影に遮られてしまう。
「仕留めさせて貰うぞ。アレン・ノーザン」
空の景色を遮ったのはノエルの姿。
首元に突きつけられる鉤爪の凶刃。
アレンは其れを見て、ニヤリと笑みを浮かべ
ノエルに向かって視線を飛ばす。
「………死ぬの?俺…」
「ああ、あの世で此の時代の行方を歯軋りでもしながら見守るといい」
「………そっか」
ノエルはアレンが生を諦めたと実感する。
しかし、次の行動はノエルにとって驚愕とも
言える程に想定出来ないモノだった。
「やっぱりそれ…楽しくなさそうだから遠慮しとくよ」
薄れ行く意識の中でアレンは、ノエルの鉤爪
を素手で掴むと手のひらから血を流しながら
不敵に笑って見せる。
そして、寝転んだままカットラスを頭上側へ
振り上げるとノエルの顔面を襲う。
何とか背後へとステップを踏んで避けようと
したノエルだったが彼の頬をカットラスの鋒
がほんの少し触れジワリと血が流れる。
そして、視線を戻したノエルは立ち上がった
アレンの姿を確認したのだった。
「………まだ、立ち上がるか」
「当然でしょ。俺等は控えてる真打ちに繋がなきゃいけないんだよ……時代を変えるバトンをさ」
アレンの身体に最後のチカラが纏われる。
そして、立ち昇る水流の渦が正に天を衝くか
の如く空へと向かって行くとアレンは其の渦
を旋回しながら空を目指す。
そして、高さを確保してアレンは口を開く。
「絶技……」
其の言葉と共に滑空を始めたアレンの身体と
共に激しい淡藤色の流水がノエルに向かう。
そして、叫びはチカラと成った。
「 水天燕式・飛燕爪ッッ!!!!」
アレンの絶技が、ノエルを襲う。
激しい流水の乱反射と共に地上へと降り立つ
ノエルは静かにカットラスを腰元に戻す。
そして、限界となり覚醒は解けて行く。
「アンタはそれでも無理だと言うんだろうけどさ……この一勝が無駄になるなんて俺は思わないよ。だって…繋いで行くのが想いってヤツなんだからさ」
アレンは深く息を吐き、返答をする事が無理
な状態となったノエルの元から駆けて行く。
血は、止まらない。
其れでも、刃を振るうのだ。
周りから何を言われようともアレンの背後に
控えるあの男が負ける所は想像出来ない。
革命軍総長ノア・クオンタム。
アレンにとってノアが憧れとして生き続ける
限り、限界を超えても尚、彼の足は未来へと
向かって止まる事は無い。
帝国軍本部、左翼の戦い。
同盟軍アレンvs政府軍ノエル。
勝者、同盟軍アレン・ノーザン。
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