RISING 〜夜明けの唄〜

第十六篇第一章 “日の出戦争”

帝国軍本部左翼の激突

帝国軍本部、左翼。

此方にはウィルフィンの指揮する一番隊隊員
達が陽動の為に攻め込んで来ている。

既に、戦場は陽動四隊に割り当てられている
革命軍と反乱軍の混成一般隊士達と政府軍に
属する帝国軍の大佐達以下の兵士達が交わり
大乱戦の絵図が完成していた。

響き渡る怒号と、混沌とした叫び声と呻き声
更には飛び散る鮮血が戦争の恐ろしさを嫌と
言う程に物語り始める。

其の中で、カットラスに淡藤色の水流を纏い
舞う様に戦う一人の少年の姿有り。

其の男の頭上から此の場に於いては圧倒的な
波動を誇る男が鋭い爪の装甲を武器に空中を
掛け少年へと迫り来る。

振り下ろされた爪の装甲とカットラスが高い
金属音を奏でて衝突を起こした。



「なんだよ……弱っちいだけかと思ってガッカリしてた所だったわ。アンタが相手してくれんの？」


「随分と思い上がった少年の様だ。己の立場……確りと理解して行け」



幹部勢同士の初の衝突劇。

同盟軍所属兼革命軍幹部アレン・ノーザンと
政府軍所属兼帝国軍少将ノエル・スティング
が左翼にて邂逅を果たした。

両軍の一般兵達が一斉に吹き飛ばされる程の
練り上げられた波動のぶつかり合い。

やはり覚醒へと至った人間達のレベルは常軌
を逸していると言えるだろう。

大混戦にて狭く感じていた戦場も二人の波動
のぶつかり合いで完全に場所が開けた。



「というワケなんでさ。全員でこんな端っこに居てもしょうがないでしょ……他の敵を誘き寄せといてよ……隊長さん」


「ああ……其の男はお前に任せる。決して死ぬんじゃ無いぞ？」


「誰に向かって言ってんのか…わかんないって…其の言葉…ッ……！」



アレンの言葉を受けて小さく笑みを浮かべた
一番隊隊長ウィルフィンは先へと駆ける。

其れに合わせてノエルの爪の攻撃が襲い来る
とアレンは淡藤色の水流をカットラスに宿し
正面から其の攻撃を受けて立つ。



「御仲間に助けを乞えば良いものを……」


「だーかーら……誰に言ってるかわかんないんだって……そうゆう言葉はさ」


「驕りが過ぎるぞ……アレン・ノーザン」


「アンタが俺に勝てたら…見つめ直してやってもいいよ？俺のそうゆう所をさ…」



アレンの安い挑発にノエルは乗ってしまう。

白花色の旋風を宿し其の爪の装甲での連撃を
アレンに向けて連発し始めるがアレンは其の
攻撃を軽々とステップを踏みながら受け流し
カットラスでノエルの首を狙う。

しかし、ノエルは其の一撃を弾くと静かに声
を上げて空へと舞い上がって行く。



「疾風覚醒……“ 鴉咬狩獲レイヴンハンター”……ッ！」



希少な白い翼の鴉の羽根。

鴉の嘴にも見える首元の装飾に、爪の装甲が
ノエルの手に同化し鉤爪と化した。

そして腰元に白い鴉の羽根の羽毛の様な布が
巻かれると空からアレンを見下ろした。