RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
686 / 729
第十五篇第四章 政府軍〜威光再臨譚〜

パンドラの筐

しおりを挟む






帝国軍本部内、中庭。

隊士達の休憩場所ともなっている爽やかな風
が吹き抜ける中庭の大きな大樹の太い枝の上
に寝転び瞳を閉じる者有り。

其処に一人の女性が近寄って来ると真下付近
に在る噴水の縁に座り込む。



「あの時以来ね……大丈夫なの?U・J、貴方は……」



噴水の縁に座った其の女性から大樹の枝の上
に寝転ぶ少将U・J・ブラッドへと弱々しい
声が掛けられた。



「………マリア…オメェの方が大丈夫かって聞きてぇよ俺は…」



瞳は開かぬまま、自身の腕を枕に密集した葉
に隠され見えぬ空を見上げる体勢で口を開く
U・Jの言葉に中将マリア・シリウスは俯き
力無い笑みを浮かべた。

其の理由は、U・Jは知っている。

其れは、今しがた飛び込んで来た突然の急報
革命軍と反乱軍が同盟を結んだ事に由来して
いる事であった。



「ロイの奴が此処へ来るぜ?オメェこそ心の中…ぐちゃぐちゃだろ」


「………ええ、そうね。まさかロイと完全に敵対するとは思わなかった…」



実は革命軍幹部ロイ・バーナードと此の中将
マリア・シリウスは幼馴染であり、かつては
恋仲の関係に在った。

だが、ひょんな事からロイは帝国軍を脱退。

革命軍幹部として成り上がり、今や同盟軍の
人間として此の戦に乗り込んで来る。



「………サーガの事でオメェは俺を心配して来てくれた……だが俺から見りゃあロイの事でオメェの方が心配だ……」


「………前後を入れ替えて見たら気持ちは同じよ。サーガの意志を継いで貴方が政府に牙を剥かないかってね…」


「お互いアレだな……気持ちの整理は付いちゃあいねぇって事だ」



噴水の縁で座るマリアは朧げな表情を浮かべ
膝を抱いて顔を其処に埋める。



「同じ組織に所属してようが其々の正義って奴にゃあ…おんなじ色はねぇ。ロイもサーガも自分の正義を貫いた結果って事だ…」


「……なら其れが彼等の自由であり正義って事だったのかな?」


「かもしれねぇな。だからよマリア……俺達は今…其の場に直面して見なきゃ解らない正に…パンドラの筐ってトコだ……どんな答えが出されるか俺達にもわからねぇ……」


「………パンドラの筐…」



パンドラの筐。

其の中身は開ける事でしか知り得ない絶望を
宿すと言われる禁忌の筐。

二人は今、其の鍵を手にしている。

決行日、二人は其の箱の前に立たされる。

開けるか否か、其の判断すらも他人では無く
自身に預けられているのが其の筐の現状。

開けるが吉か、開けぬが吉か、はたまた何方
にも吉すら在せぬパターンも有り得る。

だからこそ、U・Jは此の言葉だけはマリア
に言って置かなければならなかった。



「……腹だけは括っておけよ?」



其の言葉だけでマリアはU・Jの心情を総て
理解出来てしまっていた。

恐らく、同じ心情だったからなのであろう。

筐の前に立たされる日は刻一刻と迫り来る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...