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第十五篇第四章 政府軍〜威光再臨譚〜
頑固者への懇願
しおりを挟む王都リオプレジアの帝国軍本部内。
既に結集した戦力の中に一人、とある部屋の
窓際に椅子を置き天を眺める者有り。
其の者は、今何を想うのか。
憂い気の強い瞳で天を見上げ、まるで何かに
黄昏ているかの様な心情が紐解ける。
「珍しいどすなぁ、あんたがそないに空を見上げてはるなんて……」
「バレットか……」
其の者を尋ねて来たのは国王直下帝国軍中将
バレット・ワグナーであった。
バレットは椅子に座した儘で此方を振り返る
事もしない巨躯の相手に目を向ける。
「もしかして、愛弟子はんの事どすか?話を聞いただけの身分で言うのもアレどすけど。なんであないな真似をしたんやろうな…?」
「…………もしかしたら歳月を通し、凝り固まった何かがあったのやもしれんな」
「凝り固まったなんか?そら何どす?」
「想いという名の正義だ。ワシにも知り得ない奴にとっての其れが……虎視眈々と形を成しそして暴発……いや炸裂したと言う事なんだろう」
「アンタでも知り得えへん正義どすか……気持ちは汲む事こそ出来てもわしには到底、理解には及ばなおすなぁ」
バレットは頭を掻きながら椅子に腰掛けた儘
の中将クロス・ヴェルタイガーへと配慮の情
を浮かべながら言葉を選び話す。
だがしかし、バレットが本日此の場にクロス
を尋ねて来たのには理由があった。
今のクロスには酷な話だと理解しつつも此の
話をせずには来た意味が無い。
揺れる心情を押し殺し、意を決して口を開く
バレットから其の言葉が流れ出る。
「U・Jの事はどう考えてますのん……?」
「U・J……か。奴の何を考えるって?」
「わかってるはずどすえ。サーガとU・J、奴等の絆はほんまもん……サーガの仇が政府ってのはもう変えようもあらへん。奴もまたけったいな行動を起こす前に釘を刺すべきちゃいますか……?」
バレットの考えは至極真っ当。
其れはサーガとU・Jの関係性を見れば誰が
見ても明らかで在り考えに至る所。
クロスは数秒間の沈黙の末に口を開く。
「釘を刺して止まるタマなら…奴は既にワシの地位なんざ飛び越しとる」
「強さがほんまもんやさかい厄介なんどすえ……そやさかい他の誰かではのうて…アンタが止めなあかんのどす。元上司のアンタしか其の役目は全う出来ひん……」
「………かもな。忠告ありがとよ、バレット。しかしよ……奴には奴の正義が在る。其れを押さえつける様な真似はワシには出来んぞ」
「そやけど、ほな……」
バレットから搾り出された言葉にクロスから
返答の言葉は一行に飛んで来ない。
バレットは呆れた様に溜息を吐いた。
「頑固なんは昔っからそうどしたなぁ……変わらしまへんね、アンタもまた…」
バレットは気遣いを見せて深々と一礼すると
クロスの元から足を進めて離れて行った。
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