RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十五篇第三章 同盟軍〜維新誓心譚〜

浴衣と恋話

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一方、縁日は盛り上がりを見せていた。

其の縁日に向かう一行の中に普段とは違った
装いを纏いながら緩りと歩く女性達の姿。



「はわわわわわっ……あ、歩きにくいですっ……これっ…」



初めての浴衣に苦戦を見せていたのは隣国の
王女であるシェリー・ノスタルジア。



「わかるっ…着物とか浴衣とかって窮屈だし歩きにくいよねっ」



背後からシェリーの腰元を支えたのはポアラ
であったが、団子屋時代に毎日着物を着用し
動き回っていたポアラにとっては此の程度は
お茶の子さいさいと言える話。

恐らく、シェリーへの優しさだろう。



「ふふふっ……でも、とってもお似合いですわ、姫様。ねぇ、アドリー?」


「う、うん。そうね……でも、はぁ……私も苦手かもしれない…浴衣って…」



シェリーとポアラを挟む様に脇を歩いて行く
のは革命軍副長ティアと反乱軍参謀アドリー
此の浴衣での縁日はティアからの提案だ。



「だったら、ちょっと向こうで休むっ?」


「空いてるベンチがありますっ……すこしだけ休みましょうーっ……!」



ポアラの提案で縁日の道から多少離れた道に
置かれた木製ベンチに腰掛けた四人は爽やか
な風に吹かれながら休憩を挟む。



「ねぇ、ティア……何でいきなり浴衣?しかも段取り良すぎない…?」


「ふふ、其れは……此の同盟の話が上がって其れが結ばれたと知った時にノアから、息抜きをしたら良いと言われたからですわ」


「成る程、ノアからの提案ね……ちゃんと二人が上手くいってるみたいで安心したわ」


「其れはお互い様ですわ、エルヴィスとアドリーも……アツアツだと聞いていますわよ」



「ばっ、バカティアッ!!急に変なこと言わないでよっ、もう……っ」



不意のティアからの一言で頬を真っ赤に染め
アドリーが照れるとポアラが驚いた様に声を
上げて見せる。



「えっ!?まってまってっ……二人ともってか四人ともかっ……そうゆう関係だったのっ!?」


「ええ、そうですわ」


「はぁ……少しは動揺したりしなさいよ…ホントにティアは……」


「わぁぁっ……大人って感じっ……」



ポアラもまた何やらぱあっと笑顔を咲かせて
いた横でシェリーは不思議そうに首を捻る。



「ポ、ポアラはさ……好きな人とか居ないの?」



ほんの少し人見知りを発動させたアドリーに
おどおどと問い掛けられたポアラはギクっと
した表情で顔を赤らめて後頭部を摩る。



「す、好きな人はいるけどっ……まだ、二人みたいな関係では無いかなあって……」


「だ、誰ッ……!?」



アドリーもまた、やはり女の子。

そういう話には興味津々な模様である。



「一緒に旅してる……シャーレって青い髪の……」



ポアラが俯きながらそう、話すとアドリーと
ティアが目をパチクリさせながら目を合わせ
何やら悪い笑みを浮かべて声を合わせる。



「「へぇ……っ?」」


「なによっ!?その目はぁっ……!」



恋話に笑みが混じり絡みこそ少ないアドリー
とティアとの関係性に変化が生まれるポアラ
の横でシェリーがあんぐりと口を開けた。



「はわわわわわっ……ポアラ様はシャーレ様の事がす、好きだったのですかっ!?」


「こ、声でかいってばっ!!シェリーちゃんっ!!」


「あらあら、姫様も一緒に居たのに気付かなかったのですか?」


「意外とというか、見た目通りに……純粋だったのね…シェリー姫は」



話がシェリーに向いた今がチャンスとばかり
にポアラが話をシェリーに振る。



「シェリーちゃんはどうなのっ!?ロードとなにか進展ないのっ!?」


「でしたわね、そういえば」


「恋の騎士ナイトだもの……しかも言われて見れば彼って一応、王子でしょ?弊害消えてるし……」



そんな事を言われながらシェリーへと迫って
行く女性陣達の視線にシェリーは目を回して
何やら混乱し始めて大きく叫ぶ。



「はわわわわっ……私そんなの……わかりませんてばぁっ!!!!」



シェリーの大声がまるで縁日に花を添える為
の花火の様に夜空へと打ち上げられた。

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