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第十五篇第三章 同盟軍〜維新誓心譚〜
金獅子と銀狼
しおりを挟む過去の告白。
ノアはティアにだけ其の話を打ち明けた。
そして、ノアの雰囲気を察したティアは早々
にアドリー達との合流を果たすべくノアとの
距離を空けて其の場を離れて行った。
一人となったノアは三階に在るベランダ部を
ぐるりと回って草木が生い茂り縁日の開催側
とは真逆の静かな方を目指す。
其方側へと足を進めたノアの視界に一人の男
が先取りと言う雰囲気で自然を眺めていた。
「……エルヴィス…」
「……ノアか。話は終わったのか?」
「ああ、話し終えた。話は変わるがエルヴィスは…縁日に出向くと思っていたよ…」
「…………なあ、ノア」
エルヴィスはノアの言葉を呑み込むと緩りと
口を開きながら山脈を見上げた。
「護国の志、俺は仲間達に此の国を他国の脅威から護ろうと豪語し付いてきて貰ってた。其の道中じゃよ、志半ばで命を落とした仲間もいたんだ……」
「………其れは俺達も一緒だ。かけがえの無い仲間の命を踏み越えて前へと進んでる」
ノアはエルヴィスの横に静かに立つと両肘を
欄干に乗せて山脈を見上げ始めた。
同じ形で、両者が並ぶ。
「ディルから聞いたか?」
「……此の戦いの先に起こる二通りの顛末の話か?」
「ああ、そうだ。其の可能性の中には…俺達の志とはかけ離れたモノがあった……どうして、仲間達は俺の背中を押してくれた?」
「此れは結論かと聞かれれば願望と言われるかもしれぬ話だ……。反乱軍にも譲れない志が在る様に…革命軍にも其れが在る。固い信念同士のぶつかり合いが互いの心を溶かした……俺はそう思うが、そうあって欲しいと願っているだけだとも言えるな…」
「願望か…なら俺等は大バカモンだな。俺もよ……そんな淡い美談に期待をしちまってる…」
二人の表情にほんの少しの笑みが戻る。
「期待は無償だ。どんな想いを抱えていようとも俺達には…進むという義務がある」
「ああ…だな。一度でも…旗を掲げて立ち上がった奴はよ…其の想いに呼応してくれた仲間のタメにも…逃げるなんて選択肢は選べねぇ様になってんだ……」
「……まだ見ぬ未来にどんな結末が待っていようとも…今其れに恐れる意味は無い」
「強くなったな…ノア。お前はよ」
「いつだってエルヴィス…君に追いつきたかっただけだ…俺は」
「……そうかよ」
互いの心の底に押し殺された苦悩。
仲間の死や国家の情勢が彼等の道を変えた事
は言わずもがな明白であった。
白と黒、金と銀ー。
対比される事を厭わずに分けた互いの運命。
彼等の運命が遂に交わりを遂げた。
総ては互いの志、そして互いの仲間達の為に
出した決断の先に生み落とされたモノ。
揺れる時代と、揺れる心境。
一踏み毎に変わって行く此の時代のど真ん中
で彼等に与えられた使命は大きい。
此の同盟が、大きく国を変えるのだ。
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