RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十五篇第三章 同盟軍〜維新誓心譚〜

新しい友達

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旅籠“ヒノマル”に残ったメンバーの内、一人
の女性は何やら和室の窓際で外を眺めている
が其の表情は何か困った様な風にも見える。

褐色肌の革命軍ルナは窓の欄干に肘を置いて
室内のテーブルに置かれた器に目を向ける。



「(気分転換と言われたから……旅籠の食堂をお借りして久しぶりに作らせて貰ったが…作り過ぎてしまったな……)」



ルナの視線の先には器に盛られた洋菓子。

香ばしい匂いを発しながら綺麗に焼き上げた
其の洋菓子は食欲はそそるがどうにも量的に
一人分とはなっていない。

そんな折だった。

窓から首を出していたルナの真隣の和室の窓
からひょこっと青い髪の女性が顔を出す。



「うわッ!!ビックリした……」


ルナにジッと視線を送る其の女性に気付いた
時には既にらしくない声が漏れていた。



「る、ルナちぃ…この匂いなぁに!!?」


「え、匂い…?ああ、クッキー…だけど?」


「……クッキー?」


「ああ、そうか。知らないのも無理は無いかな…此れは海外のお菓子だし」


「お菓子ッ!!」



何やら目をキラキラさせた反乱軍幹部リズは
いきなり欄干から身体を投げ出してふわりと
浮遊するとルナの部屋の窓に到達する。



「リズッ!!アンタ、スカートで飛ばないでッ!!下着見えるでしょッ!?」


「ルナちぃ、パンツなんか見てもお腹は膨らまないし、見られてもなくなるワケじゃないんだからさあ」


「(天然なのか、やはり此の子は……)」



不思議そうに笑いながら首を傾げるリズの事
を見ながら、そう察したルナは心の中で呟く
とリズの視線がクッキーに夢中になっている
と気付き始めた。

すると、リズの半開きの口から涎が滴る。

其れを見たルナはクスリと笑って優しい表情
でリズにこう、問い掛けた。



「作り過ぎたの、一緒に食べる?」


「た、食べるっ!!」


「飲み物は何がいいかしら、私は紅茶を貰って来るけど……」


「オレンジジュースがいいっ!!」


「ふふっ、ちょっと待っててね」



ルナは笑みを浮かべて、和室を出て行く。

そして、飲み物を手に入れて部屋へと戻ると
リズの姿勢にまたしても笑みを浮かべた。



「そんな、正座までしてソワソワしてなくても良かったのに」


「だって……おいしそうなんだもんっ」


「食べましょ。待たせてごめんね」



ルナはリズと同じく畳の上に足を崩して座り
クッキーに舌鼓を打ち始める。



「………ふぁ……」


「え?口に合わなかったな?」



クッキーを一口だけ頬張ったリズがフリーズ
するのを見たルナは不安気に声を出す。

しかし、其の後の反応で全てが解る。



「お、お、お…………おいしぃぃぃ!!」



何やら感涙の涙を流しながらクッキーを食す
リズを見てルナはホッとしていた。



「リズ、はじめて食べた…クッキー…しかも新しいお友達と一緒に……しあわせっ」



満足気なリズと共に作り過ぎていた筈のルナ
のクッキーは良いペースで無くなって行く。

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