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第十五篇第二章 夜明けを導く者達
銀狼の鼓動 “狼狽”
しおりを挟む「うわあああああッッ!!!!」
眠りから覚めて其の光景を目の当たりにした
ノアは過呼吸となりながら尻餅を着く。
そして、滴る汗と恐怖から流れる涙を浮かべ
アークを見たノアはガタガタと震えを帯びて
パニック状態となってしまう。
「………違う…ノア…俺は……ッ……」
慌てて弁明しようとしたアークを見るノアの
瞳はまるで兄アークを拒絶した様に映る。
「………ざけんなッ……ノア…俺はァ……お前を………ッ……」
ノアの過呼吸は激しさを増す。
声すら上げられない程に怯えたノアの姿を瞳
に映したアークは必死に手を伸ばすも其の手
を途中で下ろし壊れた様に笑う。
「……そうかッ……そうだよなァァ……俺は人殺し……ッ…怖くて恐くて…たまらねぇよなァァ……ノアァァ!!」
大声を上げて高鳴る様に笑い声を上げ狂った
表情を見せたアークは正に死神にも見える。
そして、アークはもう正常では無かった。
歯車が壊れた人形の様に笑いながらノアの横
を緩りと通り抜けて家を出て行く。
其の惨殺現場に一人、取り残されたノアはと
言うとパニックのままで、大きな叫びを上げ
大粒の涙を流して意識を失ったのだ。
其の声はきっと、アークにも届いただろう。
「………そんな過去が……」
刻は現代へと舞い戻る。
ノアの話が綴じられ絶句した様な表情を見せ
視線を送るティアに対し、ノアは口を開く。
「………冷静になって思い出した。兄はあの時…俺に何かを伝えようとしていた。其れに……横を通り過ぎた時、微かにだが兄は泣いていた様な気がするんだ」
「……其れって…」
「………ああ。此の話にはきっと続きが在る様な気がしてならない…俺はあの後知っての通りピースハウスへと引き取られた。そして革命軍を興すのだが…まさか、兄が帝国軍に居ようとは……話す機会を失ってしまった」
「だから、今回…兄アーク・クオンタムとの戦いを真っ先に選んだのですわね」
「……そうだ。此の過去にも…ケジメを付ける此れ以上無い舞台となる……俺は、まだ心の何処かで優しかった兄を信じたいのかもしれない…親の仇だと言うのにだ」
寂しげな表情を浮かべるノアの元へ寄り添う
様に近寄ったティアは優しく微笑む。
「憎しみを持ち戦いに向かうのなら止めたかもしれない…でも、いつものノアの言葉で安心致しましたわ……」
「………ありがとう。ティア…此の七日を俺達も有意義なモノとしに行こうか」
「……ですわね」
互いに瞳を合わせて笑みを浮かべるティアと
ノアの姿を夕陽が照らし出す。
同盟軍の誕生、遺恨の解消、更にはノアの心
の中に隠されていた哀しき過去。
明かされて行く真実の数々。
そして未だ残された謎の数々。
其れ等、総てを解き明かす準備は整った。
七日後に迫る、時代に刻まれる大事件。
其れを描き上げる直前の小休止。
大事件迄の幕間を暫し、此処に描こうか。
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