RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十五篇第二章 夜明けを導く者達

孤児村を離れて十年

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旅籠“ヒノマル”での作戦会議は終わった。

此処に集った戦力達にディルからこんな提案
が持ちかけられていたそうだ。

此処から王都迄は、約一日で到達出来る。

だからこそ、六日間の寝床は此の旅籠を貸切
として取っている為、皆は焦らず戦いの刻に
備えて身体と心を休める事。

更には刻も良く、旅籠の周りは此の季節には
縁日が開かれているのだそうだ。

死蜘蛛狂天の情報網は政府にも及ぶ。

国王ストラーダと妻サーラは拘束を施されて
いるが食事面等は今の所で問題は無い。

ロード達は心置きなく心と身体を休める事に
集中出来る環境は整っていた。

しかし、六撰将達は作戦の詰めを行いたいと
此の和室を拠点に会議を行う事となった。

だが、其の六撰将の中で一人、ザックだけは
話をして置かなければならない人間達が居る
事を忘れてはならなかった。

敢えて席を外したウィルフィンとフロウ以外
の孤児村ピースハウス出身の四人と共に夕陽
に染まる旅籠の扉を開きベランダ部分で欄干
に背を当てた四人と遂に言葉を交わす。



「ザックさん……本当に多大なる御心配を掛けてしまいました…申し訳無い……」


「でもよ…ザックさん。此れだけは理解して欲しいんだ……目的は違えた…だけどよ、俺は…いやきっと俺達は相手を憎む様な真似だけはしなかった……」


「エルヴィス……はぁ…それは“きっと”なんかじゃなくて…絶対よ…」


「あらあら…今日のアドリーはエルヴィスに手厳しいですわね」



笑みを浮かべながら目線を合わせる四人。

其れに対しザックはあの時の記憶をなぞって
胸の中が熱く染まるのは実感した。



「白と黒に別れても……君達はやはり、親友同士だった…其れが私にとって最も嬉しい事です……」


「白と黒……別れたからこそ昔よりも仲良くなれんじゃねぇかな?」


「そうね…背中を押してくれた仲間達のおかげで今は心からそう思えるわ…」



ザックは其の言葉に涙を浮かべると声を上げ
話したエルヴィスとアドリーは多少おろおろ
と慌て始めたがノアが口を開く。



「十年もの長い間…俺達を忘れずに居てくれた事……本当に感謝します」


「ふふ、ザックさんの気持ち……ものすごく嬉しいですわ…もう喧嘩なんて致しません…ご安心ください」



俯きながら涙の止まらないザックの肩にノア
とティアがそっと手を置いて見せる。

其れを見たエルヴィスとアドリーも目を互い
に合わせて安堵した様な表情を浮かべる。



「ハハハ……そっか。ならあと少し頑張らないとですね…作戦会議に戻ります。みんなはほんの少しの休息を楽しんで下さい」



そう言葉を残してザックは室内へと戻る。

其れに合わせてエルヴィスとアドリーもまた
ベランダから出ようと足を進めた。



「………ティア、話が在るんだ…」


「……話?」



何やら神妙な面持ちで其の言葉を発したノア
を気遣いアドリーに背中を押されエルヴィス
はベランダから離れて行く。

夕陽の元でティアとノアだけが残された。


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