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第十五篇第一章 篩分の門番
“度胸と愛嬌”
しおりを挟むポアラは幼少期、こんな事を考えていた。
『ねぇ……ママっ?男の子はいいよねっ…力が強くてさあっ』
『ポアラ…アンタまたマーシャルの道場を見に行ってたでしょ?』
『……うんっ。でも女の子は危ないから…なんていわれちゃったっ……』
記憶に流れて来た幼少期のポアラの頭を其の
優しい手のひらで撫で上げた母は口を開いて
穏やかな口調でこう続けた。
『ポアラ?男の子がみんなみんな強いワケじゃないんだよ?パパとかマーシャルは強いけどね……強さって…優しさを持てるかどうかなのよ』
『やさしいと強いは…チガウ気がするんだけどなあっ……』
『そんな事ない。人に優しくあれる強さ…それを持てるかどうかで腕力じゃない…人としての強さが変わるの』
『ヒトとしての強さっ……?』
『……そう。それとね……女の子には男の子にマネの出来ない強さがあるのよ?』
優しく微笑んだポアラの母の表情と其の言葉
にポアラは不思議そうに首を傾げた。
『女の子の強さは……笑ってみて?うんっ…その笑顔……度胸と愛嬌……男の子には無い強さを女の子だけが持ってるの…だから辛い時ほど笑わなきゃ……ポアラならやれるっ!だってママの子だもんっ!』
ポアラの瞼は閉じたまま。
だが、変化が突如として起き始めた。
鍛錬場に連なり突き刺さった氷柱の群れ達が
翠色の重力を受けて地に沈み割れて行く。
「…………貴女も超えて行くのね…」
そして、ヒラリと妖精の羽根を羽ばたかせて
ポアラの身体がフワリと起き上がった。
「あたりまえだって…言ってるじゃんっ」
傷付いた身体を押して笑顔を浮かべたポアラ
にソフィアは呆気に取られてしまった。
「………余裕ね、笑顔なんて…」
「ちがうって…どんな苦しい未来が待ってるかわかんないから…笑うの。だって女の子の強さって…笑顔でしょっ?」
其の瞬間、だった。
ソフィアの足元に翠色の魔法陣が突如として
展開されると慌てて空へと飛ぼうと翼を広げ
地を蹴ろうとしたソフィア。
しかし、空に舞う事は出来ない。
何故なら其の翠色の魔法陣には大地のギフト
の特性“重力”が効力を発揮しているからだ。
「………しまったっ…」
「さっき言い損ねたけど…理想なんてアタシには要らない……アタシは…アタシ達は自分達のチカラで未来を勝ち取るんだからっ!その先に…みんなで笑える毎日があればそれでいいんだァァ!!!!」
ポアラが地を蹴り拳をグッと構えながら羽根
を用いて空を翔けて行く。
そして、翠色のオーラを纏う拳をソフィアに
向けて全身全霊で放った。
「絶技…… 精霊柔術・翠玉拳ッッ!!!!」
ポアラもまた、己の限界を超えた。
笑顔の待つ未来を其の拳が開いて行く。
決意を込めた一撃を放ったポアラのチカラに
ソフィアは微かに笑みを浮かべた。
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