RISING 〜夜明けの唄〜

第十五篇第一章 篩分の門番

覚悟は声と成る

「ロード殿……大丈夫。震えを抑えなさい、貴方と皆が創り上げて来た繋がりに依って生まれ出でた試練……彼等も必ず乗り越えます。ですので此の試練を私達も見届ける事を責務と捉えましょう……」


「レザノフさん……」


「ロード様っ……あの方々は退路を示してくれていました。ですがその退路を断ち…門の前に立ったのは皆様の意志ですっ……思い悩まず応援いたしましょうっ！！」


「……シェリー…」



ロードは、自身の運命が仲間達を此の戦いの
渦に呑み込んでしまったと悔いていた。

だが、目を向ければシャーレ達三人の試練へ
立ち向かう人間達の目は強く前を向いており
残されたシェリー、レザノフも通るべき道で
有ると理解を示していた。

だからこそ、心に決めたのだろう。

全員其々が決めた覚悟の道を其の目で確認し
其の上で、口を挟める事など無い。

後悔の念や、自責の念等は彼等への冒涜。

ロードは、其れを心に言い聞かせた。



「みんなッ！！頼む……超えてくれェ！！」



心の中からの叫びは、エールへと変わる。

そして、其の言葉に心を打たれた三人の背中
に力強さが宿った様にも見えた。

シャーレは青龍刀を、シグマはランス型の槍
ポアラはナックルダスターを其々構える。



「流水覚醒……“ 雅清飛竜グレースワイバーン”ッ！！」


「大地覚醒……“宝石妖精ジュエルフェアリー”ッ！！」


「疾風覚醒……“ 閃角翔馬グリントユニコーン”ッ！！」



飛竜ひりゅうシャーレ・スティーバ。

次縹色のオーラを纏い額からワイバーンの角
を有し、腕にはマント状の盾を持つ姿をした
覚醒状態をリゼアに披露する。


宝精ほうせいポアラ・セルヴァンテス。

翠色のミニスカドレスを纏い妖精の羽を背に
広げ、エメラルドのナックルダスターを拳に
宿してソフィアの前で身構える。


瞬閃しゅんせんシグマ・オルフェアス。

額から螺旋状の一本角、萱草色の毛皮の様な
ファーを身につけ、追加の防具を纏いディル
に向けて螺旋状の槍を突き付ける。



「何とも遺憾なんだ……ロードの事を何一つ知らずに捕らえようとする者達の考えが。だが…やはり私は幸運を持っている。此の試練を超えれば……ロードと共に戦えるのだからな……ッ！」



「好き勝手に言いたい放題言ってる人達にさっ……これだけは言いたいんだ……ロードもシェリーちゃんも逃げずに戦ってるっ……とんでもない運命とねッ！！」



「せやかて…全員人間なんやで？ツライ時もあるんや…苦しい時もあるんや……誰かの肩に荷物を乗っけたくなる時もあるんやッ！！そないな時が迫っとる……ビビってるヒマなんてないっちゅーってんじゃッ！！」



其々の鍛錬場でロード達の視界の中で彼等の
戦う理由が声として発せられる。

其れは総て、仲間の為のモノ。

彼等は、進む。

運命に踊らされた扉の向こうへとー。