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第十四篇第三章 最悪の顛末
冷たい雨の下で
しおりを挟む「アダム、イヴ……」
「御意ッ!」
怒りのままに地面を蹴るディルが狙うのは
宰相、ガズナの首だったが其の面前に側近の
二人が立ち塞がるとアダムが太刀、イヴが槍
を構えてディルの刀をクロス状に武器を交差
させて受け止めた。
「怒りのままに刃を振るうなど意味を為さない。此の世に生まれた以上、愉悦、愉楽…其れを求め続けるのが一番だと思わないか?」
「黙れッ!!」
「あら…貴方はもっと冷静な人だと思ってた。意外ね…でも致し方無いわ…焦りとはそもそも心の豊かさを奪うモノなのだから」
其の言葉がディルの琴線に触れる。
そして、遂にディルのギフトが解放された。
其の色は唐紅色、そしてギフトは流水。
深紅に染まる流水の渦とディルが誇る圧倒的
な波動が宰相警護特命衛士の二人、アダムと
イヴを怯ませる瞬間に一人の男が此の場へと
乱入を果たしディルの肩を引いた。
「………リゼアッ……!」
「ディルよ、此の場は某達と共に退くのである……ッ!」
突如として現れたリゼアに肩を引かれディル
は宰相ガズナ達から引き剥がされた。
「何故邪魔をするッ!?今…ストゥ達を救けねばならん事がわからないのかッ!?」
リゼアは、ディルが此処迄、平静を失い声を
荒げているのを久しく見ていなかった。
「言い分は解るのである…だが、今此処に大将アークの隊が向かっているのだ」
「だから、何だと言うのだ……今を逃したらッ……あの二人はッ……!」
リゼアに食って掛かるディルの背後から今度
は双剣小太刀を構えた白髪の女性が此の場に
乱入を果たし白銅色の氷の壁を張る。
「………ソフィア…」
「ディル、此処は引いてあの二人を救け出す手段を練るのよ…勝手に聞いていたけど十日はあるし…処刑をダシに呼び出したい人達が居るんでしょ?」
死蜘蛛狂天三大幹部が此処に揃う。
そして、会話をする真後ろでソフィアが放ち
壁としていた白銅色の氷塊が砕かれる。
「貴様等が向かって来ぬなら此方から一言述べて…帰らせて貰うぞ?暇では無いのでなあ。ワシらは……」
「貴様……ガズナ…」
「貴様等…死蜘蛛狂天もクビじゃ。もう二度と政府の敷居を跨ぐで無いわ…」
そして、振り返ったガズナは高笑いを浮かべ
部下達に持たせた鎖を引かせストラーダ達を
ネクロゲートの外へ向け引きずって行く。
最後までアダムとイヴの二人が死蜘蛛狂天へ
睨みを効かせた後で漸く目を切って足を外へ
向けて進めて行くのを見過ごすしか出来ずに
いたディルは両膝を着いて俯いた。
降り頻る雨に打たれ、絶望と失意の淵に堕落
させられたディルは地面を何度も叩く。
「ディルよ…ストゥの為に…此の十日は大事である…」
「行きましょう。大将はもう直ぐ近くに来ていたわ…立ち止まってしまったらもう二度とチャンスは訪れない」
脱力したディルは二人に肩を引かれて何とか
立ち上がり此の場を後にして行った。
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