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第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者
感恩戴徳の日々 “斡旋”
しおりを挟む「万屋……か…」
「おっ?何だオマエ…万屋家業に興味でもあんのかッ?」
「………いや、ちょっと訳アリでな。あんな事言ったが…俺も仕事探さねぇとな…ってよ」
ストラーダの言葉にアラネアは首を傾げる。
「オマエ……仕事探す意味あんのかよッ?裕福の頂点にいんだろッ…オマエは」
アラネアの言葉にストラーダは悪寒が走る。
そして、恐る恐る言葉を探して訊き返す。
「……今、なんて言った…?」
「だーかーら……オマエ。ストラーダってケーニッヒ王家の皇子だろうが……仕事なんて探す意味ねぇだろッ……ってよ」
胡座を掻いたまま話したアラネアに自分自身
の事を言い当てられたストラーダは慌て驚き
立ち上がると背後へと跳び距離を保つ。
「知ってやがったのか…ッ!」
「当然だろッ?有名人中の有名人じゃねぇかオマエ」
「コンニャロ…ッ……!」
「だが、なんか勘違いしてやしねぇかッ?オマエ……オレはオマエをどうこうしようなんて思っちゃいねぇよ…」
「………信用できねぇ…」
「そうだろうけどよ…?人間なら誰しも自分の立ち位置に悩むコトぐらいあらァな…オレはねぇけど」
ストラーダからほんの少し力が抜ける。
其れは自分自身で捨てて来ていた人間という
呼び名で呼ばれたからであった。
人権差別の頂点に居るケーニッヒ王家からも
飛び出して来てしまったのは自分達が生まれ
ながらに人間とはかけ離れているという罪を
感じてしまったから。
だが、目の前の男は、王族をも平気で人間と
呼称している事に違和感と多少の安堵感をも
感じさせてくれていた。
「正体も顔も隠して仕事探すのは大変だろ。救けてくれたお礼として……もしオマエにその気があんなら…オレがそういう仕事を回してやる…どだ?悪い話じゃねぇだろ」
いつの間にか距離を取って身構えていた筈の
ストラーダは吸い込まれる様に其の豪胆さを
持つアラネアの前に腰を下ろしていた。
「…………いいのか?厄介モンを抱え込むのと一緒だぞ……?」
「ワーッハハハハ…そんな細かいコト気にして生きるようならよ…こんなド派手な刺青なんて彫っちゃあいねぇっての…!」
「………ハッ…それもそうか。アンタ…天下御免の傾奇者だもんな…」
そう言い残すと突然立ち上がったアラネアは
ストラーダにこう言い残して背を向ける。
「まあ、明日になっても気が変わらなかったらよ……花町の西側にある“大蜘蛛”って万屋に尋ねてきな……明日の昼頃なら絶対にオレはいるからよ…ほんじゃな」
こうして片手を上げて歩き出したアラネアの
背中を目で追うストラーダだったが何故かは
解らないがアラネアが立ち止まる。
「つか、花町ってどっちだ?」
「………ホント、締まらねぇヤツ……」
こうして、ストラーダはアラネアの提案から
万屋で日銭を稼ぐ毎日が始まった。
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