625 / 729
第十四篇第一章 追憶の遭逢
運命の岐路 “嘆願”
しおりを挟む怯えながら身体を震わす其の女性はチラリと
向けた視線の先にとあるモノを見つける。
そして、窓の外に干された其の羽織の紋様に
目を奪われ、一気に立とうと動き出す。
が、足を痛めておりベッドの下に落ちた所で
身動きが取れなくなってしまった。
「オイッ!アンタ、大丈夫かッ!!」
「来ないでッ!!!!」
ストラーダは其の女性の声にピタリと足を
止めて固まってしまった。
其の声には怒気とも恐怖とも取れる畏怖の念
が盛大に盛り込まれていたからだ。
そして、彼女の口から驚愕の言葉が飛ぶ。
「お前はプレジアの人間……しかもあの紋様は王族でしょうッ……何故、助けるのかすら意味が解らない……だからもう近寄らないでッ!!」
ストラーダは其の言葉から真実を見つけ出し
此の女性が何者なのかを悟った。
恐らく、此の女性は戦争の為に連れ出された
バルモア側の女性であると。
だからこそ王家の紋様を、見て恐怖を覚えて
まるで死を目の前にした獣の様に威嚇を見せ
牙を立てている様にも見えた。
しかし、ストラーダにとって其処は問題では
無く心の底からの想いを伝える。
「怖がらせて済まねェ。だけどアンタ…其の足じゃ…生きてくのは大変だ……だから頼む…命を粗末にしないでくれ……!」
「何をして…………」
其の女性は眼前の光景に目を疑う。
恐らくプレジアの王家の人間であろうという
男が自分の目の前で土下座を始めた。
其れもとても、深くだ。
「生きてく為の飯の調達とか……治るまででいいんだ…俺に看病をさせてくれ……!それ以外の時は俺は外でなるべく過ごす……だから頼むッ!!!」
其の女性は言葉を失った。
だから、返答はしなかった。
だが、ストラーダは静かに顔を上げて女性が
目を逸らしている横顔を見て笑う。
「……拒否しねぇって事は…いいって事だよなッ!?」
其の女性は身体を使って何とかベッドの上に
痛みを堪えて這い上り、また窓の外から川辺
を眺めて口をつぐんでしまった。
「おしッ!!魚焼いて来てやっから待っとけよ……腹が満たされりゃ…少しぐらい気持ちが明るくなるかもしんねーからよ!」
ストラーダは外へと駆け出して行く。
其の女性はチラリと其の背中に視線を送ると
複雑な胸中で心を揺さぶられていた。
軍の給仕として駆り出され敗軍の列の中から
逸れてしまった其の女性は既に三日間、仲間
の救けを待ったが誰一人現れなかった。
だからこそ、心が痛んでいた。
そして、皮肉な事に、そんな自分を救けよう
と動いたのはプレジアの王族。
其の女性は自身の言葉を巻き戻すとバルモア
の人間であるという事を彼は悟ったのだろう
と考えついてしまった。
きっと、いつかは飽きて殺される。
そんな恐怖をも宿しながら困惑する胸中の中
で己の人生の終焉を考えていた。
30
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる