RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十四篇第一章 追憶の遭逢

運命の岐路 “犠牲”

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ストラーダは感じていた。

兄エヴィアの才能は言葉を尽くしても語れぬ
程に他を圧倒し秀でているのは間違いない。

其れは学問に於いても、武道に於いても他の
追随は許さぬ程であった。

そんな兄の存在感は幼少の頃よりストラーダ
の自信という自信を総て削ぎ落として来た。

だが、ストラーダは兄への憧れを持たない。

其れは嫉妬等の歪んだ感情では無く当たり前
のモノが欠如している様に感じたから。

王家に生まれて十五年。

ストラーダには忘れられない記憶が在る。

其れはとある昼下がりに王家が連なり城下町
を闊歩するという顔見せの機会に訪れた。

王家を挟んで沿道を染め上げた人々の群れの
中でストラーダは一人の老人を見て其の目を
止めたのだった。

ストラーダの真横に居た老人は腰を悪くして
おり杖で支えて立っていたが沿道の人間達に
押され倒れ込んでしまった。



「おじいさんッ……大丈夫ですかッ!?」



反射的に駆け足で駆け付けたストラーダは杖
を拾って老人に肩を貸す様に手を回す。



「おお、ありがたやありがたや……こんな老いぼれに手を差し伸べて下さるとは…」


「いや、そんなの気にしないでください。お怪我はありませんか?」



老人への優しさを見せたストラーダには沿道
を染め上げた国民達から惜しげもない歓声と
拍手が注がれていた。

だが、列に戻ったストラーダに兄エヴィアは
驚きの一言をぶつけて来たのだ。



「ストゥ……穢らわしい真似をするな…あの者達と我々では…住んでいる世界も立場も異なるのだ……王族ならば威厳を持て…!」



此の一言は、兄エヴィアの性格の悪さを反映
したモノでは無いと理解して欲しい。

此れが、人権差別時代の成れの果てだ。

もし、国民達を“人”として扱うならば王族は
“神”として扱われる。

其の教育方法が王家にとっては当たり前。

だが、其れに異を唱えるストラーダの言動は
逆に異端児として扱われてしまう。

王家にとってはエヴィアが“普通”で“異常”で
あるのがストラーダというワケなのだ。

元より人権差別の中心に居たケーニッヒ王家
の中で一人、ストラーダは苦悩を抱えており
其の苦悩が絶望へと変わる瞬間が訪れる。

其れはバルモア軍撃退に沸くプレジア陣営の
本丸の眼前に死屍累々の如く掃き捨てられた
様に転がる帝国軍の兵達の姿だった。

此の戦争で取り上げられた国のトピックは
兄エヴィアの華々しい初陣だけだった。

此の温度差にストラーダは凍り付く。



「おかしいだろ………なんでこんだけの人が死んでんのにコイツ等は……笑ってられんだよ……ッ……!!」



ストラーダは一人、此の戦場に命を落とした
プレジアの国民達の姿を其の瞳に焼き付けて
いたが無情にも歓喜の凱旋が決まりエヴィア
の隊は国の中枢へと戻るのだった。

ストラーダは一人、此の重苦しさに心を強く
締め付けられたままであった。
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