RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
612 / 849
第十三篇第五章 生まれながらの枷

孤影遮り日向に散る

しおりを挟む






「馬鹿な……何故、貴様が謝る……悪いのは全て我だ……貴様は…貴様達はッ……謝る道理が無いだろうッ……!!!!」



言葉に熱が込もるー。

シルヴァの創り上げて来た孤影の形。

全てを背負い込み影として暗闇に生きて来た
シルヴァの仮面がヒビ割れて散り行く。



「………言っただろう?俺達は、変わらず仲間なんだ……お前の気持ちも解る…言葉だけでは信用して貰えないと考えた……だから必死にお前の事を調べ上げた……ホーリーセンスという一族の事をだ……!」


「………ッ!!」



シルヴァは言葉を失う。

そして、続けられたノアの言葉に其の瞳へと
込み上げて来た熱いモノが決壊の刻が来たと
腕をぶす様に待ち構える。



「背負い続けて来た…一族の因縁。たった一人でだ……其れを知らずにお前を理解しようと……理解したと宣っていた俺が間違っていたんだ。今ならほんの少しだが解る……辛かっただろう…?一人にしてしまって済まなかった………」



ノアの瞳に浮かんだ涙の粒に当てられて彼の
瞳に溜まっていた雫は完全に瞼から零れ落ち
一本杉を支える地に吸収されて行く。



「やめろ……やめろッ……我は……我は……貴様等を裏切ってッッ……!!」


「一族…家族の為だッ!!俺は…俺達は其の中で耐え抜いて来たお前に敬意を表する事はしても……恨むなんて真似はしないッ!!」


「………もう…やめてくれェェ……何故だ…何故……貴様は…………」


「其れが…絆なんだ。其れが……仲間というモノなんだよ……シルヴァ……ッ!!」



シルヴァは泣き崩れた。

全身に痛みが回り、麻痺して来た筈の身体が
何故か、痛みを感じなくなった。



「…………ッ……ノア…ッ……今まで済まなかった……ッ………ありがとう……ッ!!」


「シルヴァ……初めて見たよ。お前の笑顔…ッ!」



ノアは感涙の涙を流した。

初めて其の目に映したシルヴァの笑顔。

運命に翻弄され一族の業を其の背に背負って
生き抜いて来たシルヴァにとってある意味で
初めて他人に見せた隙。

やっと繋がれたのだとノアは実感する。

ノアは袖で涙を拭って立ち上がるとシルヴァ
から一度目を切って背中を向けた。



「もう直ぐ…フロウが到着する筈だ。必ず救ける……其の傷だって塞がるんだ……だから改めて創り上げて行くんだ……俺達の仲間としての証を……!」



ノアは言葉を弾ませた。

また此れからが本当の始まりなのだと、嬉々
として未来を語り上げる。

其れだけ、シルヴァの真意をシルヴァの本当
の姿を知れた事が嬉しかった。





だが、返事は来ない。

笑みが一変、背を向けたままのノアは何かを
悟ってしまったかの様に凍り付く。

振り返るのが怖くなった。

だが、振り返らざるにはいられない。

恐る恐る、振り返る。





其処には、笑顔のまま息を引き取り人生との
今生の別れを済ませて永い眠りに付き終着点
を迎えたシルヴァの姿があったのだー。




しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...