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第十三篇第五章 生まれながらの枷
孤影遮り日向に散る
しおりを挟む「馬鹿な……何故、貴様が謝る……悪いのは全て我だ……貴様は…貴様達はッ……謝る道理が無いだろうッ……!!!!」
言葉に熱が込もるー。
シルヴァの創り上げて来た孤影の形。
全てを背負い込み影として暗闇に生きて来た
シルヴァの仮面がヒビ割れて散り行く。
「………言っただろう?俺達は、変わらず仲間なんだ……お前の気持ちも解る…言葉だけでは信用して貰えないと考えた……だから必死にお前の事を調べ上げた……ホーリーセンスという一族の事をだ……!」
「………ッ!!」
シルヴァは言葉を失う。
そして、続けられたノアの言葉に其の瞳へと
込み上げて来た熱いモノが決壊の刻が来たと
腕をぶす様に待ち構える。
「背負い続けて来た…一族の因縁。たった一人でだ……其れを知らずにお前を理解しようと……理解したと宣っていた俺が間違っていたんだ。今ならほんの少しだが解る……辛かっただろう…?一人にしてしまって済まなかった………」
ノアの瞳に浮かんだ涙の粒に当てられて彼の
瞳に溜まっていた雫は完全に瞼から零れ落ち
一本杉を支える地に吸収されて行く。
「やめろ……やめろッ……我は……我は……貴様等を裏切ってッッ……!!」
「一族…家族の為だッ!!俺は…俺達は其の中で耐え抜いて来たお前に敬意を表する事はしても……恨むなんて真似はしないッ!!」
「………もう…やめてくれェェ……何故だ…何故……貴様は…………」
「其れが…絆なんだ。其れが……仲間というモノなんだよ……シルヴァ……ッ!!」
シルヴァは泣き崩れた。
全身に痛みが回り、麻痺して来た筈の身体が
何故か、痛みを感じなくなった。
「…………ッ……ノア…ッ……今まで済まなかった……ッ………ありがとう……ッ!!」
「シルヴァ……初めて見たよ。お前の笑顔…ッ!」
ノアは感涙の涙を流した。
初めて其の目に映したシルヴァの笑顔。
運命に翻弄され一族の業を其の背に背負って
生き抜いて来たシルヴァにとってある意味で
初めて他人に見せた隙。
やっと繋がれたのだとノアは実感する。
ノアは袖で涙を拭って立ち上がるとシルヴァ
から一度目を切って背中を向けた。
「もう直ぐ…フロウが到着する筈だ。必ず救ける……其の傷だって塞がるんだ……だから改めて創り上げて行くんだ……俺達の仲間としての証を……!」
ノアは言葉を弾ませた。
また此れからが本当の始まりなのだと、嬉々
として未来を語り上げる。
其れだけ、シルヴァの真意をシルヴァの本当
の姿を知れた事が嬉しかった。
だが、返事は来ない。
笑みが一変、背を向けたままのノアは何かを
悟ってしまったかの様に凍り付く。
振り返るのが怖くなった。
だが、振り返らざるにはいられない。
恐る恐る、振り返る。
其処には、笑顔のまま息を引き取り人生との
今生の別れを済ませて永い眠りに付き終着点
を迎えたシルヴァの姿があったのだー。
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