RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第三章 血の氾濫

取捨選択の恐怖

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宰相ガズナが執った裏帝軍の大改革。

其れこそがグレイの軍団長就任であった。

腐敗した裏帝軍を変えるべく新しい軍団長と
なるグレイに一つの恩を振り翳した。

更に、血の氾濫という大事件の恐怖の恩恵を
使ってグレイ・ギルノーブルという男は規律
を乱す者を容赦はしないというデマを流す。

人と群れないグレイは此れを態々、否定的に
立ち振る舞う事もしない事は計算済み。

政府直下裏帝軍は、政府内の頂点である宰相
ガズナ・ペティットの思惑通りに再建の一途
を辿り始めるのだが、ガズナの思惑はガズナ
の知らない所でたった一つ狂っていた。

其れは、血の氾濫事件の当事者達が新軍団長
グレイ・ギルノーブルに向ける視線。

此の期間に新しく幹部入りを果たしたアノン
とスネイク、そして同時期に幹部入りとなる
エマ、ライアの四人はグレイを讃えた。

今も尚、薄暗い地獄の様などん底に居る事は
変わらないが、血の氾濫事件に依って裏帝軍
に芽生えたモノは何も恐怖だけじゃない。

腐敗した組織に堕とされた一筋の希望の光。

四人にとっては、グレイは救世主だった。

結果的にも父を殺されたエマですらグレイに
対する感謝の念は深く四人総出で新しき裏帝
の軍団長を担いで行く地盤は血の氾濫という
大事件で出来上がっていたのだ。

四人は知っている。

ぶっきらぼうに他人と群れないグレイという
男は恩人の為にチカラを振るえる人間である
という彼の本質を。

彼を孤独にさせない、其れが血の氾濫という
大事件で紡がれた彼等の血の結束ー。

そして、舞台は過去の奔流から解き放たれる
と、軍団長グレイに仕える四人の幹部の猛威
がシャーレ達に襲い掛かって行く。



「………ぐっ…まだ痛みが抜け切れていないか………」



膝を着き、息を切らしたシャーレを見下ろす
蛇の眼は、冷たくのし掛かる様に向けられて
言葉と共にシャーレに迫り来る。



「貴方達がどう足掻こうと……私達の為すべき事は既に決まっている……いやはや…とんだ時代に居合わせたものだな……恨むなら哀しき時代を恨みなさい……」



景色が、静かに広がって行く。

瞳を閉じたままの軍団長グレイとは対照的に
正面に立ち尽くしたロードとシェリーは表情
を強張らせ拳を強く握った。

二人の瞳に映った其の光景は凄惨なモノ。

連戦続きで疲弊していたシャーレ四人が眼前
に並ぶ裏帝軍幹部達に全敗を喫した光景。



「ウソ…だろ………」


「はわわっ……皆様っ………!」



静かに幹部達の視線がロードとシェリーへと
冷たさを帯びた瞳から向けられる。



「良く生き延びたと賞賛に値するでありんす……」


「だが終わりだァァ!!何を企んでるのか知らねェがよッ……テメェ等が喧嘩売ったのは国っていう余りにもデケェ壁だってのを思い知れよォ!!」



ロードは、アノンとライアに突き付けられた
言葉に其の場から飛び出そうとした。
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