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第十三篇第三章 血の氾濫
血の氾濫 “残痕”
しおりを挟む此の日に起きた出来事は瞬く間に政府内へと
伝播する様に広まって行った。
其の禍々しき事件は、こう伝わる。
『一人の男に依って裏帝軍幹部、全滅』
グレイの起こした謀反に依って当時の裏帝軍
幹部達、そして幹部派の人間達を含めた総勢
三十人が死に至った。
裏帝軍のやり方、方針に納得が行かなかった
その他のメンバーに止められる事も無く幹部
達はグレイ一人に敗れ去ったのだ。
此れは、裏帝軍が大きく変わる大事件として
半ば伝説として語り継がれている。
其の大事件の名が、“血の氾濫”である。
事件当夜に、フォスターの死を受け入れる事
が完全に出来なかったグレイは政府から送り
込まれた帝国軍の兵達に依って捕らえられて
大監獄プリズングァザへと送られた。
グレイは夥しい程に静かに残酷に流れて行く
其の膨大な時間の中で時代を恨む。
何故、死ぬ事が国への忠誠の証なのか。
何故、死ぬ事を怖がる事が罪なのか。
何故、同じ人間同士で傀儡と王の様な力関係
が生まれて来てしまったのか。
生まれが悪い者は、其のどん底から抜け出る
事は出来ないのだろうか。
彼は、悟ってしまった。
弱き事、とは己の努力やひたむきさでは全く
変える事の出来ないモノである。
不変であり、叩き付けられた事実。
王家、貴族の名家、人は生まれた瞬間に完全
にスタートラインが別けられているのだ。
だからこそ、グレイは強く心に刻む。
弱き事は、罪ー。
何の肩書きも無い一般の民が国から救われる
事等、ありはしないという事を。
そして、投獄から数年が経過したとある日。
牢に繋がれたグレイの前に一人の男が牢の前
に訪れ、彼の事を眺め始めた。
そして、訪れた男は彼にこう言った。
「血の氾濫事件の首謀者…グレイ・ギルノーブル。御主のチカラを見込んでワシが此処から出してやろう……見返りとして御主はワシと共に此の国の再建を担うのだ」
其の男とはプレジア国宰相へ就任を果たした
ガズナ・ペティットであった。
グレイは、目の前に現れたガズナを其の眼で
捉えると言動、表情、視線から此の男が何故
自分を牢から出すのかを悟る。
何の肩書きも無い者が、国から救われる様な
優しき世界等、存在はしない。
だからこそ、理解が早かった。
此の男は、弱き立場のグレイが唯一、神から
授かった才能を必要としている。
其れこそが弱き地位を持つグレイが誇る他を
凌駕する圧倒的な“強さ”である。
そして、ガズナから一言、グレイへと冷たく
こう言葉が付け加えられた。
「不要な物は取捨選択されるのじゃ。ワシは腐り切った裏帝軍の当時の幹部達を消してくれた事に感謝しとる。今回は其の行為を功績として受け取る……じゃが……解るな?御主もまた其の取捨選択の渦に戻るという事を肝に命じて置きなさい……」
グレイはまた一つ、悟る。
自身は政府の飼い犬でしか無いという事を。
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