RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第三章 血の氾濫

血の氾濫 “敬愛”

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「………腹減った……」



グレイ・ギルノーブル、当時で十八歳。

彼はとある任務に着いていると束の間の休憩
の時間に川辺で大きく腹を鳴らしていた。

微々たる給金の約半分以上を落人群へ義援金
や支援物資としていたグレイにとって給料日
直前は苦しい生活が続いていた。

そんな時であった。

彼の元に一人の男が歩み寄って来る。



「オマエ、飯はどうした…食わなきゃ力出ねぇぞ?」



グレイは川辺に座り込んだまま背後からの声
に身体を向けて振り返ったが其の光景に驚き
を隠せていなかった。

目を丸くして口をあんぐりと開けたまま黙り
こくっているグレイに其の黒髪の男は何故か
イライラを募らせて彼の頭に拳骨をかます。



「イテェッ……!!何しやがんだ、オメェはよッ!!」


「はァ!?声掛けてんのに無視してるオマエが悪いんだろうがッ!!」



其の男はグレイの真横にドサッと胡座を欠き
座ると大きな巾着袋を前に置く。

グレイは訳が解らんと言った表情で其の男の
横顔を眺めていると目元から首元に向かって
彫られた刺青に目が行った。



「オイ、だから何で無視した?オマエ」



話は終わって無かった様で突然グッとグレイ
の顔を睨み付けた其の刺青の男。

グレイは怯まずに言葉を返す。



「何でって……ココの連中から話しかけられんのなんて初めてだったからだよ……」


「……ん?ああ。そういう事か。確かに此処の連中は魂が抜けちまった様な奴が多いもんな…」



取り敢えず納得と言った表情を見せた刺青の
男は勢い良く巾着袋を開けるとガサガサと中
を右手でまさぐっていた。

すると、目線を合わせず巾着袋の中にあった
笹の葉で出来た包みをグレイに投げる。



「ほらよ」


「んおッ!?いきなり投げんなッ…テメェ…ってコレって………」


「さっき殴っちまった詫びだ。やるよ、オマエに…俺のもあっから心配無用だぜ?」



グレイは其の笹の葉を開く。

其処には垂涎モノの握り飯が入っていた。

喉を鳴らし唾を飲み込んだグレイだったが首
を突然に横に振って何かを抑え込む。



「オイ…なんかの罠か?コレ……」


「はァ?オマエ、ひねくれてんなあ…イラねぇなら返せ……って、ハハ…腹の虫ってヤツは正直だな」



強がりを見せたグレイの腹から強烈で強大な
音を奏でた腹の虫に其の男が笑う。

グレイは顔を赤らめた後で恥ずかしさを振り
払う様に其の握り飯にかぶり付いた。



「喉詰まらせんなよ?オマエ」


「わかってらァ!………つか、ウメェよ。ありがとな……」


「ほう、礼が言えんのか?意外だな」


「んなの、当たりめぇだろッ!?バカにしてんのか…ッ…!」


「悪かった悪かった。俺は、フォスター…フォスター・アルペジオだ。此れから宜しくな?新米」



後の軍団長グレイ・ギルノーブルの兄貴分と
なるフォスター・アルペジオの此れが出逢い
の一幕であった。
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