RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第二章 鳳凰殿への来客

龍と成る逸材 “妬心”

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戦鬼と謳われるガルフ・ジャッククォーツの
実子として帝国軍の入隊試験を全ての分野で
トップ通過したアビスは其の才能を遺憾無く
発揮し個人の部隊を持つ将官クラス達の目に
一瞬で止まる事となった。



「ホッホッホ……アビス・ジャッククォーツ……鬼の元に生まれた鬼才其の物じゃのう……ガルフよ。元帥命令じゃ、自分の隊で面倒を見なさい」



其の日の入隊試験の行程を全て終え帝国軍の
本部最上階、元帥執務室にて緩りと椅子に背
をもたれかけさせ座り込んだ七年前当時元帥
を務めていたテイラー・ホプキンスは笑みを
浮かべてそう話した。



「ホプキンスさん、アンタね。元帥命令って言えば何でも通ると思ってんでしょう?しゃらくせぇ御方だよ…全く」


「ホッホッホ……。通るじゃろ?元帥の命令なんじゃから」



帝国軍元帥執務室にてテイラーの座った机の
前に置かれたソファに腰掛けた七年前当時の
帝国軍大将にしてアビスの実父であるガルフ
は頭を悩ませた様に覇気の無い声を溢す。



「(………帝国軍入隊試験から見習い期間を設けずに…尉官待遇での新人抜擢…異例中の異例を、父親の隊でやれってか…アイツへの妬みや嫉妬の声は裏じゃ膨れ上がる…護ってやれって事かよ…ホプキンスさん…しゃらくせぇぜ、ホントによ…)」



ガルフの心の声は実際の所、テイラー自身も
理解している程、安直だが拭い去れない事案
なのだろう、其れ程、世の中には特別待遇等
は簡単には看過されない物だ。

其れが、アビスの実力だったとしても。

世間は裏で、アビスはこう叩くのだろう。

帝国軍大将ガルフの実子は、親の七光りで
入隊、出世、全てが確約されていただけの
出来レースでしか無いと。

だが、ガルフは知っている。

実子アビスにガルフが幼少期から特別な事を
何かして来た訳では無い事を。

強くなりたいと願う実子に基礎となる型を
教えただけに過ぎない父と子の修行。

だが、其れをアビスは父に隠れて直向きに
鍛錬し続け己のチカラを錬磨して来た。

ガルフは思うのだ。

アビスは努力の天才なのだと。

其の成長ぶりには父として驚かされてばかり
だったが、世間には其処は見て貰えない。

ジャッククォーツという名が、此の先、息子
の足枷となる未来を危惧さえしてしまう。

結果を残そうとも、ジャッククォーツの血が
アビスには流れているから。

アビスは上層部から特別待遇を許され一般の
兵とは価値が違うのだから。

世間の裏側はそうやってアビス自身の実力を
簡単には認めてくれないだろう。

テイラーも其処は心配をしていたのだ。

其れだけ、ガルフ・ジャッククォーツという
男の功績が大きい事を意味する。

そして、其の大きさが此の先、二世となった
アビス・ジャッククォーツという若き才能に
のし掛かってしまうのでは無いかと。
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