RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第二章 鳳凰殿への来客

龍と成る逸材 “夢想”

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物語は、アビスの記憶の奔流へと呑まれる。

此れは、六年前の物語ーー。

舞台となるのは王都リオプレジアの中心地に
聳える帝国軍本部である。



「何してるッスか…早く来るッスよ!U・Jッ!!」


「あいだだだだ…サーガ、コラッ……俺のコーンロウを引っ張んなってのッ……此の髪型にすんのにどんだけ努力したと思ってやがんだッ!!」



とある帝国軍の行事が行われていた此の日に
一つの噂を聞き付けて通路を急いでいたのは
当時、二十六歳で大将クロス隊の准将に任命
されていたサーガ・レオレックス。

そして、其のサーガに自慢のコーンロウを
引っ張られ文句を垂れているのは同じく当時
二十六歳で大将クロス隊の大佐を務めていた
U・J・ブラッドだった。

二人が慌てて何処へ向かっているのかと言う
と其処は大勢の人が集うコロシアム型帝国軍
用の訓練場であった。

だが、訓練場に此処迄の人が集うのは一年に
二回程しか無いというのだ。

其の二回の内の一回がたまたま、其の日に
訪れていた事で二人は急いでいた。

というか、急いだサーガに無理矢理の形で
U・Jは引っ張られていた。



「やってるッス、やってるッス!!どこスか?今回のスーパールーキーは」



サーガとU・Jが観に来たのは年に二回だけ
執り行われる帝国軍の入隊試験。

其処に一人の天才が現れたと噂があった。



「あの子ッスね!今回、どの採点種目もダントツの首位で…もう既に複数の隊が獲得に乗り出しているそうッスよ」


「……それって、スゲェの……?」


「な、何言ってんスか?U・Jや俺だって合格後は見習いの時期があったじゃないッスか……髪引っ張られて頭イカれちまったッスか…?」


「……だとしたら、それはオメェのせいだな」



そんなふざけた会話を繰り返した後で歓声に
沸き立つ訓練場へと目を落としたU・Jの瞳
に映った男こそが、アビスだった。



「……へぇ、確かにスゲェ……アレでまだ十五歳かよ……末恐ろしいじゃねぇか……」



感嘆の声を漏らしたU・Jの反応を見ていた
サーガも安心した様に笑みを浮かべる。

すると、周囲からこんな声が耳へと入る。



「アレだろ?ガルフ大将の息子……」


「サラブレッドかよ…面白くねぇな…」


「今回の採点も…親の七光なんじゃねぇの…?」



何処の世界にも蔓延る生まれの差に依る妬み
や嫉妬の感情を聞き取ったサーガがムッと顔
を強張らせているのを見たU・Jが静かに声
をサーガに掛けた。



「やめとけ、ドコにでもいんだろ、あんな連中はよ……」



サーガを静止したU・Jの耳にもそんな折に
驚くべき声が飛び込んで来た。



「見たかッ!?父さんッ……俺はいつかアンタも超えてやるからなッ!!」


「何の心配も要らなそうだな…!」



高らかに叫んだ若きアビスの宣言に訓練場に
集った帝国兵たちからどよめきと歓声が沸き
上がる様に揺れていた。
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