RISING 〜夜明けの唄〜

第十三篇第一章 創痕癒す光の泉

変わらない日常

「……たくっ……やり過ぎっちゃやり過ぎだろ………いててて…ニャロウがよッ……」



置いて行かれた事、忘れられた事、そして
想像よりも遥か上のお仕置きが降り掛かった
事でほんの少しご機嫌斜めなロード。

一応、シェリーがロードの隣に立ち痛がる頭
を撫でてはいるがシェリーとしても今は返す
言葉も無く苦笑いするしか無かった。



「その話……ぶり返すんやったらもちっと重たいのブチ込むでぇ？」


「わ、わかったよ……たくっ…立場弱ぇと言い返す言葉がねぇぜ……」



ボソッと呟いたロードを見てシャーレ達が
クスッと笑みを溢すのを見たロードは不思議
そうに首を傾げていた。



「な、なんだよ…？」


「いや、色々重なっていたからな。少しは元気そうで良かったよ」


「だねっ…自分の心配をほとんどしないんだからっ…ロードは」



シャーレとポアラはロードとシェリーの表情
態度から奪還成功は単なる歓びだけで最後を
迎えた訳では無い事を何故か汲み取っており
無理をしているのは承知の上でも変わらない
ロードとシェリーの姿に安堵する。

ある意味、全てをぶち壊すかの様に膝蹴りを
かましに行ったシグマのファインプレーかも
しれないと二人はシグマに視線を向けた。

こうして、鳳凰殿内部へと連れられて行った
ロード達は建物内の居住スペースへと其の足
を進めて行くとシグマから其々の部屋を案内
される事となった。

割り当てられていたのはロードとシャーレの
部屋とポアラ、シェリーの部屋。

そして、シグマとレザノフの部屋。

ザックは一度、六撰将の現状を把握しに行く
為に此処で離れる事となった。



「つうワケでや…今戻ってきおった面々は部屋んなかで少し休んだらええ。すごいんやで？各部屋に風呂場まで完備や…スッキリすんのが先や。ほんじゃ一時間後に入り口んトコ集合で頼むでぇ」



そう言うとシグマはレザノフと共に自身達の
部屋へと入って行く。

まるで修学旅行の引率の先生の様な連絡事項
がシグマから通達された面々の中でシェリー
が太陽の様に笑顔を弾けさせる。



「はわわわわっ…汗でベタベタだったんですっ…ポアラ様もどうですかっ？」


「シェリーちゃんが思ってるお風呂より狭いからさっ…一人の方が楽かもよっ？」


「くっついて入るのが楽しいんですっ！さっ、行きましょうっ！」



シェリーとポアラの其の会話を無心で聞いて
いたロードとシャーレに異変が起こる。

突如、噴き出した鼻血とサウナ後の様に赤く
火照り上がった表情を見てポアラが冷たさの
ある視線で呟く。



「バカっ……！」


「なあ、ロード。人が想像を働かせるのは隠し切れない人間の本能だと思わないかい？」


「……ッ…俺に聞くなよッ。ックショー……」



悔しそうに俯くロードと何やら御満悦な表情
を浮かべるシャーレから目を逸らしてポアラ
とシェリーは手を繋ぎ部屋へと入った。